ネットワーク

第7回雨水ネットワーク会議全国大会2014in福井に参加して(その2)1day ツアー

柴 早苗(理事)、高橋朝子(広報委員)

翌日の8月24日(日)は1dayツアーとして、大野市の湧水を巡るツアー及び福井工業大学あわらキャンパスの最新の気象観測機器を巡るツアーが実施されました

結の故郷、大野の湧水群を巡るツアー

近年は1年を通して自噴する湧水は1カ所と聞いていましたが、今年は概して地下水位が高めで湧出量は多く、波紋がよく見えました。「そのまま飲んでください」と、案内役の大野の水環境ネットワークの方の声に促されて飲んでみました。

冷たく清冽で実においしい!特にお武家さんが使用していたという御清水(おしょうず)は格別で、思わず「ここが一番おいしいね」と山本理事長とうなずきあいました。各戸でこんな水を毎日飲める幸せにうらやましい限りでした。

驚いたのは、南西部にある篠座(しのくら)神社の御神水。昭和51年に一升瓶に汲んで常温保存したものを、若い宮司さんが見せてくださいました。水は澄み、底のほうにふわふわした白い結晶が沈んでいました。眼病に効く名水というので、おそらく長い年月をかけて、ホウ酸カルシウムが結晶化したのではないかと思いました。

本願清水(ほんがんしょうず)イトヨの里は、天然記念物で絶滅危惧種のイトヨを保護・育成しています。この湧水は、「平成の名水百選」にも選ばれたところです。水槽から体長5㎝のイトヨを間近に観察できました。イトヨは20℃以下のきれいな水にしか棲めません。まちを上げて保護活動を進めていますが、清水群を守り復活させることでしか、イトヨを守れないだろうと思いました。

公共土木事業優先の社会経済構造、融雪用の過剰な揚水等々、相変わらず厳しい環境にあり、前日に講演された野田佳江さんの言葉通りに、大野のおいしい湧水を次代まで守り伝えてほしいとつくづく思った。

他に勝山市の恐竜博物館も、恐竜全盛時代の地球を想起させてくれ、一興でした。

(左)名水百選に選ばれた御清水(おしょうず)。殿様のご用水として使われ、殿様清水ともいわれ、何ともおいしい水だった。 (中) 篠座(しのくら)神社の御神水。瓶の下の方が白く見える。 (右)織田信長との戦いで敗れて自害した朝倉義景の墓が近くにあり、義景清水といわれる。

(左)名水百選に選ばれた御清水(おしょうず)。殿様のご用水として使われ、殿様清水ともいわれ、何ともおいしい水だった。 (中)篠座(しのくら)神社の御神水。瓶の底の方が白く見える。 (右)織田信長との戦いで敗れて自害した朝倉義景の墓が近くにあり、義景清水といわれる。

降雨情報を雲の発生から予測するレーダー、福井工業大学あわらキャンパスツアー

汽水湖である北潟湖に囲まれるように福井工業大学あわらキャンパスは、近くに風力発電のプロペラも見えるロケーションに恵まれた広大なキャンパスです。案内役は、昨日の「知る」分科会でウインドプロファイラレーダーの研究を紹介をされた同大学の中城智之教授。

最近は天気予報の精度が8~9割とよくなってきていますが、その予報は20㎞メッシュの空間解析で行われています。しかし、この予報は雲の雨粒の状態から行われており、どうしても予報が遅れてしまいます。現在問題となってきている局所的な短時間豪雨の予報には、雨雲の形成を察知できる大気境界層の風速を計測することが必要です。ウインドプロファイラレーダーは大気中の風を測る装置で、気象庁が全国に33か所設置しており、その1台が福井地方気象台にあります。2012年に福井工業大学が、研究用としてあわらキャンパスに1基設置し、気象台と24㎞しか離れていない場所に設置しました。この両者の観測データの差を比較することによって、福井地域における降雨前の風の流れのパターンを把握することができ、降雨予測をより早く、よりきめ細かく、より正確にできると期待されています。

また、遠くからも目立って見える直径10mのパラボラアンテナは、研究用としては国内最大級です。この大型アンテナは、超小型衛星(50㎏以下、一辺50㎝程度の大きさ)の微弱な電波を傍受できるます。ひまわりのような衛星と比べ、数千万~2億円と大変安価で、いろいろな試みにも利用されています。同大学は東北大学、和歌山大学、鹿児島大学と連携し、電波を傍受して、実用化に向けた実験に取り組んでいます。前述したウインドプロファイラレーダーは地上からの電波で風の流れを観測するものですが、超小型衛星の画像から雲の状態を観測することで、サンドイッチ状態でより精度が上がると考えられます。他に農業支援として、田んぼから光の波長を解析し、タンパク質の分布マップを作ることにより、おいしいお米かどうかも分かるようになるということです。

あわらキャンパスで最先端の技術に触れ、頭がいっぱいになりましたが、三国港での海鮮丼の昼食後、加賀市にある「雪は天から送られた手紙である」という言葉を残した中谷宇吉郎氏の雪の科学館を訪れ、ダイヤモンドダストやチンダル現象などの実験を見ることができました。

(左上)超小型衛星からの電波の解析を説明する中城智之教授 (左下)福井工業大学あわらキャンパスにあるウインドプロファイラレーダ (右)直径10mのパラボラアンテナで人工衛星のデータをキャッチ

(左上)超小型衛星からの電波の解析を説明する中城智之教授 (左下)福井工業大学あわらキャンパスにあるウインドプロファイラレーダ (右)直径10mのパラボラアンテナで人工衛星の電波をキャッチ

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