ネットワーク

”雨水法”周知シンポジウム~その3~雨水新時代を考える

あまみず編集部

これまで実施した雨水ネットワーク会議全国大会開催地で雨水活用普及の活動を展開するパネリストたち

これまで実施した雨水ネットワーク会議全国大会開催地で雨水活用普及の活動を展開するパネリストたち

これからの雨水法の施策化に当たり何が必要なのかパネリストの方たちが議論しました。

縦割り行政や産官学民をつなげる雨水施策を

今回のシンポジウムでの発言にも、雨水の読み方の「あまみず」「うすい」が混在化していました。法律でも「雨水の利用の推進に関する法律」では「あまみず」、下水道法では「うすい」です。これらに象徴されるように、立場や見方が変われば同じ雨水の意味が違ってしまいます。省庁をまたがって展開するにあたって、言葉や概念の整理をして、縦割り行政をつなげていかなければ、雨水の根本問題を解決することはできません。

登壇者の活動する場所でも、松山市は水資源を確保するための部署として総合政策部、世田谷区は流出抑制や豪雨対策に加えて雨水利用も進めている土木部署、墨田区は環境部署などと、地方自治体の雨水利用の担当部署はバラバラです。水資源にかかわる部署が、国でもこれまで5省が関わりを持ってきました。今後、国や自治体の雨水利用に係る計画を策定するにあたって、いかに貯留、浸透、利用のバランスを取って実効性ある計画にするかが重要です。

その際、市民参画をしながら行政自身が変わっていくことが求められます。世田谷区や松山市のように市民と協働で取り組んでいる自治体もありますが、なかなかそうならないことが多いです。福岡の角銅さんからの指摘のように、100ミリ安心住宅を実現化するには住宅部署との対応、雨をゆっくり流すための多自然道づくりでは道路部署とバラバラな対応になってしまい、市民の求めになかなか応じられない。仙台市の下水道部署では、合流下水道対策のために貯留浸透の啓発をしていますが、対象地域が限られており、他の地域の雨水活用は関係ないという姿勢です。

縦割り行政を雨水施策を通して横につなげる努力が国及び地方自治体の中で必要であり、国の方の指導の工夫も必要と思われます。その努力は行政のみが努力するものではなく、市民、事業者、学者が意識的に行政に働きかけ、自らも活性化していくことが望まれます。産官学民で構成される雨水ネットワーク会議としては、このあたりを意識しながら様々な情報交換をしながら問題提起をしていく必要があります。

コーディネーター:NPO法人雨水市民の会理事長 山本耕平

パネリスト:これまでの雨水ネットワーク会議全国大会(*2)開催地で雨水活用普及の活動を続けている方たちです。

・南畑ダム貯水する会副代表 角銅久美子(福岡)

福岡市では1999、2003年、そして会議を開催した2009年7月にも洪水がまちを襲いました。会議でつながった九州のネットワークをもとに、度重なる洪水に対し市民の手で守るため、樋井川流域市民会議を立ち上げ、住宅敷地に降った雨は下水管に流さない「100ミリ安心住宅」の実践もしています。また、最近は、世田谷区の中川さんたちと連携し、住民同士の情報交換も行っています。樋井川流域では市民が貯める市民ダムと銘打って、貯留浸透、流出抑制を行おうとしています。

・雨水楽舎代表 大北佳代子/松山市総合政策部水資源担当部長付 節水対策・有効利用担当グループ執行リーダー 竹安一騎 (松山)

松山市は、雨が少なく大きな河川がなく、降った雨はすぐに海に流れてしまっています。石手川ダムの貯留と重信川の伏流水から汲み上げる水では、ぎりぎりで少雨が続くとすぐに水不足になるという深刻さです。市では節水型都市づくりに力を入れており、水資源の有効利用という雨水利用も大きく取り上げています。市民の方に認知度をより広くするために、雨水ネットワーク会議全国大会を開催しました。その後、普及啓発を担う市民団体として、雨水楽舎を立ち上げました。パンフレットを作成したり、市民が参加するイベントで雨水活用をPRしたりしています。現在、親子で雨水活用を学ぶ事業が大変好評をいただいています。

・関西雨水市民の会 会長 水野育成/同 理事 矢壁律子(大阪)

関西は、琵琶湖、淀川を中心とする流域が、滋賀、京都、大阪の他、奈良、三重、兵庫の一部にも及んでいる大変広い流域です。神戸市のように淀川流域からは外れていますが、淀川の水を地下水道で送って賄っています。関西雨水市民の会では、大阪府と連携し、雨水モニターを募集し、環境学習とセットで普及啓発に取り組みました。現在も、学校や住民に対して面白く寸劇風にした学習会を実施し好評を得ています。

・崖線みどりの絆・せたがや 中川清史/世田谷区土木事業担当部土木計画課河川・雨水対策担当 大澤睦司(東京)

世田谷区は市街地化の拡大により少なくなった緑や湧水が、国分寺崖線に沿って残っている場所があり、崖線みどりの絆・せたがやは、その保全運動としてフィールドミュージアムを区役所と協働で活動していました。3年前からは野川の治水と湧水保全のために、雨水浸透ます、雨水タンクの普及、啓発活動も実施しています。区役所では、豪雨対策の一環として「みんなでつくろう”世田谷ダム“」をキャッチフレーズに、雨水浸透・貯留利用の推進を打ち出していますが、なかなか進まない普及啓発、住民の皆さんと協働するスタイルできめ細かく実績を上げています。

・雨水ネットワーク・とうほく 代表 江成敬次郎(仙台)

2013年に開催した雨水ネットワーク会議全国大会inとうほくの実行委員が中心となり、東北地域の雨水活用の推進と普及のために雨水ネットワーク・とうほくを立ち上げました。その初めての取り組みとして震災時の水利用についてアンケート調査、雨水サロンとして下水道の雨水処理について学習会、手作り雨水タンク講習会を実施し、来年の3月には国連防災世界大会への参加を予定しています。感触としては、雨水活用に関心がある人はまだまだ少ないので、さらに活動を進めていきたいと考えています。

・雨水ネットワーク会議全国大会2014in福井実行委員会 副実行委員長 林正憲/同 事務局長 笠井利浩(福井)

福井は水に恵まれたところですが、恵まれている故に問題が起きていることもあり、また、福井豪雨があってから10年目で、市民の方も大変関心を持っておられました。大会では、若狭地方の水循環を研究について基調報告、湧水が豊富な大野市から地下水を使いすぎて湧水が涸れてきている現状の報告等がありました。分科会では、福井の雪利用や九頭竜川での市民活動や気候変動に対応した気象予測の最新の研究などについて報告がありました。すごろくなどの子供向けの企画も行いました。実行委員会では、現在、報告書の作成中です。

*2 雨水ネットワーク会議全国大会

第1雨水ネットワーク会議全国大会を東京にて(2008年)/第2回 雨水ネットワーク会議全国大会in福岡を福岡市にて(2009年)/第3回 雨水ネットワーク会議全国大会2010in松山を松山市にて(2010年)/第4回 雨水ネットワーク会議全国大会2011in大阪を大阪市にて(2011年)/第5回 雨水ネットワーク会議全国大会2012in東京を東京(2012年)/第6回 雨水ネットワーク会議全国大会2013inとうほくを仙台市にて(2013年)/第7回 雨水ネットワーク会議全国大会 2014in福井を福井市にて(2014年)実施

« »