2015.11.04
武蔵野市水循環連続講座「水の学校」が国土交通大臣賞を受賞!
吉川 萌(雨水市民の会会員、武蔵野市「水の学校」企画・運営スタッフ、すみだ環境ふれあい館スタッフ)
2014年度からスタートした東京・武蔵野市の、水環境連続講座「水の学校」は、武蔵野市の環境部下水道課が主催する事業で、雨水市民の会に企画・運営が委託されています。今回、この「水の学校」の取り組みが、循環のみち下水道賞(広報部門)・国土交通大臣賞を受賞し、武蔵野市が表彰されましたので、ご紹介します。
「循環のみち下水道賞」とは
循環のみち下水道賞は、下水道の使命を果たし、社会に貢献した好事例を表彰する国土交通大臣賞として平成20年度から毎年表彰を行っているものです。優れた取組みを広く発信することで、受賞者の功績を称えるとともに、他の多くの団体等が同様の取組みを行い、持続的発展が可能な社会の構築に貢献する「循環のみち下水道」の実現を全国的に図ることを目的としています。(詳しくはこちら)
今年度は、約40の応募の中から12の応募案件が受賞しました。水の学校が受賞した広報部門は「下水道の役割・重要性・魅力・可能性等に気づき、共感し、行動してもらうための効果的な広報活動や環境教育の取り組み」を対象としています。
下水道から、水のゆくえ・水循環・雨水活用まで
現在の武蔵野市一帯は江戸時代に玉川上水がひかれたことで、その分水によって新田開発が進みました。その後、昭和初期からは東京郊外の住宅地として急激に都市化が進み、降雨時には汚水が舗装された道路に氾濫する浸水被害が発生するようになりました。伝染病などの衛生上の問題が深刻になってきたことから、昭和27年に下水道の整備を始め、35年で普及率100%を達成しています。 現在、市内の下水道が整備され始めてから60年以上が経ちました。しかし、下水道の管理や改修の他、合流式下水道改善施設や雨水貯留浸透施設の整備などは今も進められており、下水道事業には終わりがありません。 下水道の他にも、飲料・生活用水を供給する上水道、町の中の川や水辺など、私たちが生きていくために欠かすことのできない「水」はたくさんあります。またその一方では、集中豪雨で都市型洪水がおきることもあります。しかし、普段の生活の中では、当たり前に蛇口から出る水道水や、流した後の生活排水のことをあまり意識していない、という方は多いと思います。私自身、断水を経験した時は無意識に蛇口をひねりそうになり、いかに自分が気軽に水を使っているのかを認識しました。 「水の学校」は、このようにとても身近でありながら深くは意識していない「水」のことについて多面的に知り、楽しみながら考えを深め、自発的な市民活動が育つことを目指している講座です。
知識を元に、考え・行動する講座を企画
「水の学校」は、ワークショップとフィールドワークを組み合わせた連続講座を主軸としています。年度始めに連続講座受講生を約30名募集し、半年間で6回程度実施しています。その他にも、子ども・ファミリー向けのイベントや、旧三河島汚水処分場ポンプ場見学や多摩川河口域水上散歩、下水道写真家トークショーなど様々な講座を単発で実施し、幅広い方に「水」にふれる機会をもっていただいています。 連続講座では、参加した一人ひとりの方が「考え・行動する」きっかけを創ることをめざしています。講座で得た知識や情報を元に考えを整理しながら「どんなことを周りの人に伝えたい・知ってもらいたいか」「自分たちにはどんなことができるか」といったことの想いやアイディアを出しあう場を設けています。私たちは、このような形態の講座をうまくカタチにしていくためにはどうしたらよいのか、市の担当者と話し合いを重ね、構成を組み立てています。 昨年度の連続講座最終回では、4グループに分かれて水に関するプログラム案の企画・発表を行いました。子どもも楽しめるイベントや、地域の歴史と食文化にふれる講座、下水処理の歴史をたどる講座など、バラエティ豊かな発案がなされました。これらのアイディアは今年度の「水の学校」に反映し、一部を講座・イベント化しています。このように行動に移すところまで実現し、発案者の方にも運営に関わっていただくことで、自ら行動するきっかけをひとつひとつ創っています。(平成27年度の武蔵野市「水の学校」の詳細はこちら)
初年度修了生がサポーターとして企画・運営に参加
2015年1月に昨年度の連続講座が終わり、27名の修了生の内12名が「水の学校」サポーターになりました。サポーターは、講座や関連イベントなどの企画・運営に関わっています。 また、ミーティングを設け、サポーター間で協力しあえることを話し合ったり、それぞれが興味関心のあることなどを共有してします。 フィールドワークでのグループリーダーを務める、関連イベントで体験アクティビティの運営をする、今年の受講生へ自分の実践していることをお話する、新規で講座の企画をするなど、春からの半年間でだんだんと活動が活発になっています。また、「水の学校」との関わりの中から「水の安全性」「武蔵野市の水路の歴史」など、自分なりのテーマを見つける方も現れており、学びをどんどん深めています。
受講生やサポーターのみなさんは昨年・今年共にとても熱心です。みなさんがその得た知識や経験を活かし、協力しながら活躍の幅を広げていくために、「水の学校」という場を活かしていただきたいと思います。
よしかわ・もえ 雨水市民の会が委託されている武蔵野市「水の学校」企画・運営担当の1人。すみだ環境ふれあい館では、都会の中で小さなミドリの循環を作る「よりどりミドリプログラム」を主に担当している。最近嬉しかったことは、親指ほどの太さがあるミミズが栽培していた里いもプランターの土の中から見つかったこと。