活動記録

雨水水質調査にご協力をお願いします!

柴 早苗・高橋朝子(雨水市民の会・雨水水質調査事業プロジェクト)

雨水市民の会では、今年度から雨水水質調査事業として簡易水質検査(2項目)を始めました。来年度からは本格的な調査をしたいと考えています。今回は、これまでの簡易水質検査の結果について報告します。

なぜ雨水水質調査をするのか?

雨は汚いでしょうか?雨水活用をしている人たちは「そんなことはない!きれいだ」と言うでしょう。それは、実際にタンクに溜めた雨を利用してその水質を実感しているからでしょう。しかし、そういう経験がない場合、「汚い」というイメージを持つ人が多いように思われます。自動車の排気ガスや、酸性雨やPM2.5、さらには原発事故でも風雨により放射能汚染が広範囲に広がったということを思い描くからのようです。

大気からの汚染物質がどの程度雨水タンクの水に混入されるのかを、環境省や全国の地方自治体が実施してきた大気や直接採取した雨の調査結果を俯瞰してみました。大気汚染物質は降り始めの雨に若干含まれますが、それ以降はかなりきれいになることが推測されました。

法的には、ビル管理衛生法や学校保健法などで、雨水は「雑用水」としての分類とされ、下水道の処理水や大きなビルでの排水を処理した中水道と同じ扱いを受け、散水、修景水、清掃用水及び水洗便所用水としての利用に限定されています。

雨水はもともと「天然の蒸留水」といえるものです。溜めた雨水を普段からより積極的に幅広い用途に使えれば、もっと雨水活用が世の中に浸透するものと考えます。さらには災害時の生活用水で身体に影響のある使い方(=洗面、洗濯、食器洗い等)ができる身近な水源としての活用が図れるものと期待しています。法的にも、水質の実状に即して利用範囲が広がるよう是正されることが望まれます。昨春、「雨水の利用の推進に関する法律」が施行されましたが、この好機に雨水活用をさらに普及するために、市民の立場で雨水の水質調査を行ってみる価値は十分あると考えています。

一方で、自然水である雨水は、行政が管理・提供してくれる水道水とは違い、自己判断により利用を考えるべきという考え方もあります。しかし、自己判断するとしても、平常時におおよその雨水の水質を知っておくことは大切ですし、面的に日本各地の雨水タンクの水質を把握し、データとともに各検査項目の意味するところを広く情報提供することは重要であると考えます。

これまでの簡易水質検査の結果

図1 雨水及び水道水のpH値、電気伝導率        (NPO法人雨水市民の会・2015年7~10月実施分)

図1 雨水及び水道水のpH値、電気伝導率

       (NPO法人雨水市民の会・2015年7~10月実施分)

会員を対象に、当会の総会(2015年7月)に持参していただいたりして、HORIBAの簡易計測装置を使って雨水タンクの水のpH値と電気伝導率を測定しました。これまでに33件を実施し、一部各地域の水道水も持参していただき、雨水と水道水の比較も行いました。

その結果、pH値は水道水が6~8のほぼ中性に収まっていますが、雨水は4~10と幅があります。雨水が8~10近くのアルカリ性に傾いたものは、タンクがコンクリート製のものでした。電気伝導率は、水道水がほぼ120μS/㎝以上あるのに対し、雨水はほとんどが100μS/㎝未満という結果でした(図1参照)。これは、雨水の方が水に溶けている物質が少ないということで、蒸留水に近い水質だということです。

 今後の調査の方向

今年度はできる限り簡易水質検査を増やして雨水タンクの水のばらつきの幅を確かめていきたいと考えています。会員の方、それ以外の方、遠方の方でもご協力していただける方は、事務局のファックス又はEメールでご一報ください(ファックス番号:03-6657-1416、Eメール:office★skywater.jp(★を@に変えてください)。

これらのデータをもとに、代表的な地域やシステムなどの形態を選んで、雨水タンクの水の化学的検査や細菌学的検査を実施し、雨水活用のシステムや維持管理との関係、大気汚染物質との関連性、用途拡大の可能性などについて検討を進めていきたいと考えています。よろしくお願いします。

今年度スタートした雨水水質調査事業は、プレ調査を経て本格的調査を目指しています。

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