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広まれ!雨活アイデアコンテスト~水に関わる企業だからこそ雨水活用の普及を願う島崎博子さん

高橋朝子(Webあまみず編集委員)

写真1 笑顔が素敵な島崎博子さん(ライオン株式会社CSR推進部)

写真1 笑顔が素敵な島崎博子さん(ライオン株式会社CSR推進部)

ライオン株式会社(以下「ライオン」)は、雨水市民の会の本拠地と同じ墨田区にあり、環境学習や雨水ネットワーク全国大会の支援、「雨活アイデアコンテスト」を共催など、当会とは関わりの深い会社です。他にも水や雨に関わる環境活動を自ら積極的に行っています。その活動を多くの方に知っていただこうと、2016年2月22日に担当者であるCSR推進部の島崎博子さん(写真1)を訪ねました。

台東区側の都営地下鉄・蔵前駅を出て、隅田川に架かる厩橋を渡ると墨田区です。橋から川沿いにある「LION」の看板がある12階建ての白い建物がよく見えました。ここがライオンの本社ビルです。雨を溜めて実際に屋上庭園の散水に雨水を利用しています(写真2)。

写真2 ライオン株式会社本社ビルの屋上庭園は、雨水を溜めて散水に利用している。

写真2 ライオン株式会社本社ビルの屋上庭園は、雨水を溜めて散水に利用している。

島崎さんの所属するCSR推進部とは、どんなことをしているところなのでしょうか。CSRは、英語のcorporate social responsibility(企業の社会的責任)の略称で、企業が利益を追求するだけでなく、その組織活動が及ぼす社会的影響に責任をもち、自発的に企業自らの永続性を実現し、持続可能な未来の社会をともに築いていくという理念のもと、多くの企業が取り組んでいます。CSRには社会貢献も含まれます。

ライオンの社会貢献は、事業領域である「健康・快適・環境」と、「地域との共生」、「従業員の参画」を基本としています。ライオンは「洗うこと」を通じて水と深い関わりのある事業を展開していることから、その一環として「雨水活用の普及啓発」を行っています。

きっかけになったのは、2008年からの「雨の恵みプロジェクト」です。当会は墨田区からすみだ環境ふれあい館の企画運営委託を受けて、雨の環境学習を始めましたが、ライオンには、その活動を支えていただきました。

また、2010年に両国国技館前に「両国さかさかさ」を墨田区に寄贈、2012年には「守口さかさかさ」(大阪府)、2015年には「石巻雨水タンク」(石巻市)など、ライオンにゆかりのある地域へ雨水活用のシンボル的雨水タンクの寄贈を行いました。

2011年からは当会と共催で、全国の小中学生に雨水を活用するアイデアを考えてもらおうと、「雨活アイデアコンテスト」を実施しています。今回、島崎さんにインタビューしたのも、この雨活アイデアコンテストのことを中心にお聞きしたかったからです。

5回目となる2015年の応募は、作文、ポスター、自由研究、スローガンの4部門で5,090作品にのぼり、2016年1月9日に東京スカイツリー(R)で表彰式が行われました。受賞した作品はライオンのホームページ(図1)で公表されています。

図1 ライオン株式会社のホームページにある雨の恵みひろばのサイト

図1 ライオン株式会社のホームページにある「雨の恵みひろば」サイト

選考に当たって、当会も審査に参加させていただいています。私も参加したことがありますが、大人が発想できないきらりと光る作品に出合うと、とても楽しくなります。子どもたちが一生懸命に雨水活用について考えたり体験することにより、「雨」を通して自然を学び、社会の在り方を考える良い機会になっていることを実感します。

島崎さんたちは、さらにこのコンテストが質、量ともに高まっていくことを願って、ライオンの事業所や社外の関係先を通じて、雨活アイデアコンテストの趣旨を学校へ広めようとされています。さらに、雨水活用の理解を深めてもらおうと、子どもたち向けの手引き書や、その指導に当たる学校の先生方向けの学習指導テキストを配布しています。このテキストも改訂しながら内容の向上を目指しています。雨水市民の会も島崎さんたちといっしょに、コンテストの充実に取り組んでいきたいと思います。

取材して、島崎さんたちの取り組みは、地域と人とともに、水を大切にしていきたいという活動であることが伝わってきました。逆に市民活動として雨水活用を普及啓発することを目的とする雨水市民の会が励まされる思いでした。

なお、普及啓発の拠点だった「すみだ環境ふれあい館」は、残念ながら2月末をもって閉館となりましたが、地域をフィールドとして新しい活動を展開していく予定です。ライオン株式会社には今後も引き続き、コラボレーションしていただきたいと思っております。

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