活動記録

雨タスサロン⑩雨+コーヒー:小澤陽祐さん(有限会社スロー代表)のお話

Webあまみず編集部

2017年11月8日(水)に、森林農法によるオーガニックコーヒーをフェアトレード*1で輸入し、自社焙煎して販売する有限会社スロー代表取締役の小澤陽祐さんをお招きし、水とコーヒー豆の雨タスサロンを開催しました。当会の雨カフェでもこのコーヒーを使っています。

超軟水から非常な硬水まで4種類の水でコーヒーを作った。微妙味が違って利きコーヒーが面白い。雨水はコーヒーにするとどんな味になるのだろう。実際にパックテストで硬度を測定した。

超軟水から非常な硬水まで4種類の水でコーヒーを作った。微妙に味が違って利きコーヒーが面白い。雨水はコーヒーにするとどんな味になるのだろう。実際にパックテストで硬度を測定した。

利きコーヒー

お話の前に、利き酒ならぬ「利きコーヒー」で水の硬度の違いにより、コーヒーの味がどう変わるのかを参加者で試しました。小澤さんは、昨年夏に湧水が豊富である名水の街、岐阜・郡上市に移住され、おいしい水出しコーヒーをつくりながら、身近な水との関係性に興味を持ってもらおうというプロジェクトに着手しました。今回の利きコーヒーは、雨カフェの担当である小谷久美さんの発案ですが、小澤さんにとっても初めての体験だったそうです。

水は硬度*2が違う4種類の水、①郡上の天然水(硬度:12mg/ℓ)②郡上八幡の湧水(100mg/ ℓ)、③国分寺市の水道水(およそ80〜100mg/ ℓ)の、④エビアン(300mg/ ℓ)を、同じ条件のもと水出しコーヒーで抽出しました。

お茶うけに出されたデ・カフェ羊羹(スロー社販売)

お茶うけに出されたデ・カフェ羊羹(スロー社販売)

水の種類を隠してブラインドテストをしましたが、コーヒーの香り、苦みなどがずいぶん違って感じられました。参加者の多数が、超軟水の①のコーヒーが一番おいしいと感じました。編集部のレポーターは、香り高く苦みが少な目でやはり①がよかったです。しかし、硬度が高い④も癖があってそれが良いという参加者もいました。雨水の硬度は①の超軟水よりも低い場合もあり、おいしいコーヒーになりそうです。

手間暇かけた美味しいコーヒーをフェアトレードで

小澤陽祐さんは、1999年から始まったナマケモノ倶楽部の活動に参加し(現在ナマケモノ倶楽部の共同代表)、その趣旨に賛同したフェアトレードとスローライフをビジネスとする会社、スロー社を2000年に小澤さんと2名の友人で設立しました。当時、オーガニックコーヒーは価格が高いのにおいしくないものが多く、とにかくおいしいものを作ろうと、手探りで焙煎の技術の向上に務めたそうです。

左は雨タスサロンのゲスト、小澤陽祐さん(有限会社スロー代表)。右は、今回のサロンを企画した雨カフェ担当の小谷久美子さん。

左は雨タスサロンのゲスト、小澤陽祐さん(有限会社スロー代表)。右は、今回のサロンを企画した雨カフェ担当の小谷久美さん。

オーガニックコーヒーは、大量生産のコーヒー作りと比べ、手間暇がかかります。30年ほど前は農薬を使うのが当たり前だったコーヒー栽培で、ブラジルのジャカランダ農場の(故)カルロス・フェルナンデス・フランコさんは、彼の農場内の池で農薬を散布した後に魚が浮んでいたり、散布した農夫が頭痛を訴えたりしたのを見ました。それをきっかけに、農薬の危険性に気づき、農薬の使用をやめ、コーヒーの無農薬栽培に取り組みはじめ、森林を伐採してコーヒー農場にするのではなく、森林の中で他の生物と共存して育てる森林農法を行いました。そしてジワジワとまわりにも影響を与え、彼の農場があるマッシャード市では、カルロスさんが亡くなった後の2004年に、世界で初めての「有機コーヒー都市宣言」を発表しました。

また、おいしいコーヒーをより多くの人に知ってもらおうと、年間60回位はイベントや店頭試飲会に出店し、現在もそれが続いています。包装もおしゃれな明るいイメージで、スローコーヒーを扱っていただいている店舗は全国で330を超えています。工場がある松戸市では、2009年にカフェもオープン(千葉県松戸市日暮6丁目60B-one(ビーワン) 2F)、最初は赤字が続きましたが、最近は固定客も増えてきました。

自然環境に優しいコーヒーだからこそ環境にこだわるビジネスを目指す

2011年の東日本大震災の際に、工場の地域が計画停電エリアとなり、電気で動く焙煎機が使えず仕事ができなくなりました。その時、オーガニックとかフェアトレードとか、環境を守る視点でやっていたつもりなのに、実は足元がもろいことを実感したそうです。ちょうどスタジオジブリが「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたい」と看板を掲げたのを見て、「スローコーヒーは原発ぬきの電気でコーヒーをつくりたい」と思いました。

その後、実現に向けてソーラーパネルを組み立てて自作で電気を作るプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングで目標の金額を集め、実現させました。2016年に屋上にソーラーパネルを設置してソーラー焙煎を始めました。

「郡上発!水出しコーヒープロジェクト」のロゴマーク

「郡上発!水出しコーヒープロジェクト」のロゴマーク

また、東日本大震災では、水道水の水源が放射能で汚染され、飲めなくなる事態も経験しました。小澤さんの奥様の実家がある郡上市から水を送ってもらい、水のありがたさを実感しました。昨年、自然が豊かで、清らかな水が豊富にある郡上市にサテライトオフィスを構えられました。郡上八幡には、山の水や湧水を引き込んで貯めて日常生活で使う「水舟」や、日本名水百選に挙げられた「宗祇水(そうぎすい)」があり、水を上手に大切に使う文化を肌で感じることができました。

小澤さんは、コーヒーを通じて地域の水の文化を知ってもらおうと「郡上発!水出しコーヒープロジェクト」を発案。今年の夏には、500mlの素敵なボトルと水出しコーヒーのパック、湧水などの場所を示したマップをキットとしてPRし、これもクラウドファンディングで資金を集めました。2018年5月からスタートする予定とのことです。参加者が飲む水は天然の水ですから、安全なものかの判断は自己責任となってしまうのか?水質検査をした上で水を汲める場所を数カ所指定して、行うそうです。

*1フェアトレード:開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」を いう(フェアトレードジャパンHPより)。スロー社のフェアトレードは、エクアドル、メキシコ、コロンビアや東チモールのコーヒー生産者からフェアな取引で輸入している。

*2硬度(水):水の硬度は、カルシウムとマグネシウムの量(いわゆるミネラル分)で決まる。WHOの基準では60mg/ℓ未満が「軟水」、120mg/ℓ未満が「中硬水」、180mg/ℓ未満が「硬水」、180mg/ℓ以上が「非常な硬水」と言われる。日本の水道水や地下水は軟水が多いが、ヨーロッパでは非常な硬水が多い。雨水は硬度分が一桁で、超軟水である。

« »