学術

「雨水活用建築ガイドライン」が改定されました

Webあまみず編集部

日本建築学会環境基準AIJES-W0002-2019雨水活用建築ガイドライン(一般社団法人日本建築学会、第2版2019年3月発行)

日本建築学会環境基準AIJES-W0002-2019雨水活用建築ガイドライン(一般社団法人日本建築学会、第2版2019年3月発行)

2019年3月1日に、建築会館ホールにて日本建築学会環境工学委員会が主催する雨水活用建築ガイドラインの改定講習会が開催されました。建築の概念では「雨をできるだけ早く敷地外に出す」ことでした。しかし、近年頻発する都市型洪水の対策として雨水浸透や貯留が導入されていますが、さらに面的に進めることが求められます。そのため「できる限り雨をためて、ゆっくりと流す」考え方を建築の基本としていく必要があります。雨水市民の会のメンバーでこのガイドラインづくりに携わっている人もいます。今後の普及に期待したいです。

背景

このガイドラインは2011年に制定されたものの改定となります。2014年「雨水の利用の推進に関する法律」の施行により、雨水活用が水資源の有効利用及び下水道、河川等への流出抑制に寄与する位置付けがされました。2015年には、「国土形成計画・第4次社会資本整備重点計画」が制定され、その中で自然の力を賢く活かす“グリーンインフラ”が盛り込まれました。さらに2016年に、官庁施設の雨水利用施設と排水再利用施設の設計、施工、維持管理等に関する技術的事項を定めた「雨水(うすい)利用・排水再利用設備計画基準」が改定され(「排水再利用・雨水利用システム設備計画基準」の名称も変更)、雨水利用に関する見直しがされました。同年、建築とその敷地に限らず、流域対策の視点から「蓄雨(ちくう)」という概念で技術的な規準にまとめた「雨水活用技術規準」が策定されました。

このように2011年のガイドライン制定から雨水活用の制度的な整備がされ、これらを反映したものとして見直しが必要でした。また、「平成30年7月豪雨」や地震災害が多発し、防災・減災の観点からも雨水活用が必要と考えられます。

改定のポイント

講習会では以下の項目でまとめてありました。詳しくは、「雨水活用建築ガイドライン」(AIJES-W0002-2019、日本建築学会)をご覧ください。

①新たな社会制度等との整合

・雨水の利用の推進に関する法律

・雨水利用・排水再利用設備計画基準

②雨水活用技術規準との整合

・蓄雨

・基本蓄雨高100㎜

③新たな概念、技術・製品等の追記

・グリーンインフラ

・「一時貯留・浸透・蒸発散」技術について補筆

④6章「運用」を補筆

・安全、効率的な雨水活用を継続するための維持管理

⑤その他

・「集雨」「保雨」「整雨」「配雨」の順に項目を配置し直し

・雨水活用システムの参考例をイラスト化

ガイドラインで新たに加わった項目で2点を紹介します。

図1 戸建住宅での蓄雨(神谷博、雨水利用推進法に基づく雨水活用建築、BE建築設備、2015年11月号、P17-19)

図1 戸建住宅での蓄雨(神谷博、雨水利用推進法に基づく雨水活用建築、BE建築設備、2015年11月号、P17-19)

「蓄雨」という考え方の広まり

「蓄雨」は2016年の「雨水活用技術規準」で新たに定義された概念です。敷地に降った雨を外に流出させない意味だけでなく、雨水の貯留・利用・浸透・蒸発散(雨水活用)をバランスよく行うことで、雨水を制御し、利用することです。これまで流出抑制や地下水涵養のためとしての「貯留・浸透」と水資源としての「利用」をバラバラに行なっている事例が多かったのですが、バランスよく雨水活用することで、敷地内に降る雨を1㎡あたり100㎜とどめること*を目標としています。このような考え方で、雨と融和するまちづくりを総合的に進めることが必要です。蓄雨のイメージを図1に示しました。

*時間あたり100㎜の降雨対応ではありません。

グリーンインフラは雨水活用

「グリーンインフラ」とは、「グリーン(自然)」の「インフラストラクチャー」の略語ですが、従来の「インフラ」がダムや道路などの構造物をさすのとは違い、自然環境や多様な生き物がもたらす資源や仕組みを賢く活かすという意味合いがあります。雨水活用では、単に雨水の流出抑制や身近な水資源を利用する意味合いで使われることが多いですが、雨水を利用したビオトープや一時的にためる雨池など生き物の生息地となり生物多様性に効果があります。公共の公園などで一部取り入れられていますが、今後、一般家庭にも「雨庭」が普通に取り入れられるようになって欲しいです。

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