行政

神田川・環状七号線地下調節池見学レポート

高橋朝子(雨水市民の会副理事)

2020年3月10日に、当会では神田川・環状七号線地下調節池(以下、「神田川・環七地下調節池」という)を見学する予定でしたが、主宰する東京都から新型コロナウイルス対策として中止の連絡がありました。たまたま、その直前に武蔵野市水の学校サポーターが企画した見学会に参加する機会があったので、そのレポートをします。

東京都の豪雨対策は、河川局と下水道局が中心となり、雨をためるキャパシティーを増やしたり、地面にしみ込ませて備えようとしています。雨をためるためには、河川整備や調整池を設ける、下水道設備として雨水貯留施設を設けることの他、校庭・駐車場・広場などにためたり、民間の施設にも貯留施設を誘導・促進しています。雨をしみ込ませるため、敷地に浸透設備(浸透ます、浸透トレンチ、貯留浸透など)を設置することを進めています。詳しいことは後日に報告したいと思います。

今回は、洪水常襲地域だった神田川流域の神田川・環七調節池が見学が可能なことから、武蔵野市水の学校サポーターが2月20日に見学会を催し、雨水市民の会の笹川、高橋も同行しました。「調節池」と言っても、ここは、地下40mの深さにある巨大なトンネルにためるものです。

写真1 善福寺川に沿ってある取水口。建物は善福寺川取水施設管理棟。

写真1 善福寺川に沿ってある取水口。ベージュ色の建物は善福寺川取水施設管理棟。

実際に見学したのは、善福寺川取水施設ですが、三面がコンクリートで囲まれた水路のような善福寺川にかかる環状七号線・和田堀橋の少し上流にあります(写真1)。東京都第三建設事務所の職員の方が説明をしてくださいました。

神田川・環七地下調節池は、第1期(神田川の施設、昭和63年着工、平成9年供用開始)と第2期(妙正寺川・善福寺川の施設、平成5年着工、平成17年〜19年供用開始)に分けて整備がされました。神田川水系の浸水被害を守るために、環状七号線の地下40mに内径12.5m、延長4.5km、貯留量約54万㎥のトンネルです。

河川の洪水対策は、川底を深くして川幅を広げる工事を下流から順順にやっていますが、護岸と接している民地を買収しなければならず、大変時間がかかるものです。神田川流域も度々洪水が発生していて、昭和50年代は毎年溢れていて、昭和56年は年6回、昭和58年は年3回も溢れました。しかし、神田川流域はすでに市街地化が進み、護岸工事がなかなかできない状態でした。そこで、近隣の洪水対策及び上流の護岸工事を進めていくために、大きな調節池を地下深くに設置しました。平成17年9月に記録的な集中豪雨(時間降雨112mm)があった際にも、流域で114haが浸水、妙正寺川・善福寺川付近では約3,700戸の浸水被害がありました。環七地下調節池第1期区間が供用していたため、ここに24万㎥を貯留し、さらに供用前の第2期区間にも約18万㎥を貯留し、約30haの区域の浸水を防ぐことができました。

施設の概要は図1の通りです。今回見学した善福寺川取水施設は、善福寺川に越流する水を地下のトンネルに導き、川の水位が低下した後に貯留した水を川へ排水する仕組みです。普段は無人の施設ですゲートは開いたままですが、杉並区に洪水警報が出されると、職員が来てゲートを閉め、洪水の危険性がある水位まで上がってからゲートを開け、地下トンネルに水を入れ始めます。この場所で、神田川、妙正寺川取水施設の監視も行い、遠隔操作をするそうです。監視盤のボタンを押す単純な操作で、異動して間もない職員でも操作できるように配慮してあります。また、非常電源すら使えない時は、手動で開閉が可能です。

図1 善福寺川取水施設の概要

図1 善福寺川取水施設の概要(東京都建設局「神田川・環状七号線地下調節池リーフレットR1.12発行」より)

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写真2 神田川・環状七号線地下調節池のトンネル

実際にエレベーターで地下40mまで行って、トンネルを見学しました。水が入るところなので、電気系統は一切なく、懐中電灯がないと真の暗闇となります(写真2)。最近、川の水が入ったのは昨年の台風19号の時で、トンネルの9割に水が貯まったそうです。水を排水した後は、立坑から清掃車を入れて掃除するそうです。実際、トンネル内はとてもきれいでした。年間のメンテナンス費は1億円くらいかかります。

トンネル内に白い塗料でクネクネした線が書かれ、「ヒ」「ウ 」などと印がつけれらていました(写真3)。「ヒ」はヒビ、「ウ 」はウキのことらしいです。このトンネルはメンテナンスがきちんと行われているようですが、もし、老朽化して潰れてしまったら・・と少し不安な気持ちになりました。

写真3 トンネル内はメンテナンスがされ、鱗のような模様が一面にあった。

写真3 トンネル内はメンテナンスがされ、鱗のような模様が一面にあった。

神田川・環七地下調節池は、北西にある「白子川地下調節池」(平成30年供用開始・約21万㎥)と石神井川流域の「環状七号線地下広域調節池」(平成29年着工、約68万㎥)とつながり、合計約143万㎥と、さらに巨大なトンネルとなり、広域な豪雨対策がされることになります(図2)。見学した時、ちょうど環状七号線地下広域調節池の立坑に機械が入った時で、工事関係者がモニターに映っていました。ちなみに、後から調べたところ、総工費は神田川・環七地下調節池が約1,030億円*1、白子川の方は約326億円*2、広域調節池の方が約920億円*2とあり、他の堀込式や地下箱式の調節池*3と比べ、コストがかかっていることがわかりました。

*1 国土交通省関東地方整備局ホームページより

*2 東京都建設局事業概要(平成28年版)より

*3 東京都の調節池の説明

 

図2 神田川・環状七号線地下調節池(今回見学した善福寺川取水施設)、白子川地下調節池、及び環状七号線地下広域調節池の位置関係(東京都建設局河川部資料より作成)

図2 神田川・環状七号線地下調節池(今回見学した善福寺川取水施設)、白子川地下調節池、及び環状七号線地下広域調節池の位置関係(東京都建設局河川部資料より作成)

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