技術・ビジネス

報告:記念セミナー「雨水まちづくりの実践へ」
~雨水技術者認定と雨水活用認証の成果を踏まえて

小川幸正(雨水市民の会理事・雨水まちづくりサポート理事)

図1 雨水まちづくりサポートの活動

図1 雨水まちづくりサポートの活動(雨水まちづくりサポートしてHPより)

 

NPO法人雨水まちづくりサポート*1」(以降は「雨まちサポ」と略す)は2016年7月28日に設立してから1年半余りの間に、主たる活動である「雨水技術者認定*2」、「雨水活用認証*3」、「雨水検定*4」を進めてきました。雨水技術者認定は、2017年10月28日に雨水技術者の講習と考査を行い、第一期の合格者11名を認定しました。また、雨水活用認証はサイト認証はシステム認証についても第一号の認証になりました。そこで、認定取得者及び認証取得事業所に対して証書の授与を行い、これを記念してセミナーを2018年1月13日(土)に、日本建築学会の会議室(東京)で開催しました。参加者は事務局を入れて総勢40名となりました。

セミナーでは、雨水まちづくりの実践を加速するべく、基調講演に京都から「雨にわ」づくり実践の第一人者である京都学園大学教授の森本幸裕先生が実例を紹介されました。また、東京や福岡など、全国で実践されている「雨にわ」づくりについても報告がありました。なお、私は雨まちサポの理事も兼任していますので、本記念セミナーを簡単に報告します。

写真1 国土交通省水資源部水資源政策課の今長課長の挨拶

写真1 国土交通省水資源部水資源政策課の今長岳志課長の挨拶

雨まちサポによる雨水技術者の認証

最初に雨まちサポの神谷博理事長から開催挨拶があり、次に来賓として参加された国土交通省水資源部水資源政策課の今長岳志課長が挨拶をされ、雨水活用の現状と本NPO活動への期待を述べられました(写真1)。その後、雨水技術者認定の認定者(正式名称:雨水活用施設維持管理技士)に認定証の授与と雨水活用認証のサイト認証1件とシステム認証2件の認証証の授与が行われました。認証された事業者ならびに認証レベルと認証理由は下記の通りで、各事業者から認証内容の概要が発表されました。

【サイト認証】

1.三井住友海上火災保険株式会社 駿河台ビル・駿河台新館(東京都千代田区):(認証レベル:エメラルドレベル)

雨水活用に求められる性能を十分に有しており、雨水と緑、生き物への総合的取り組みが高く評価できる。

【システム認証】

1.株式会社トーテツ(東京都品川区):

ガーデニング利用システム(認証レベル:シルバーレベル)

集雨・保雨・配雨の各部位を有効にシステム化して雨水活用に必要とされる機能を有し、維持管理が容易に行え、環境への負荷が少ない。

②多目的利システム(認証レベル:ゴールドレベル)

集雨・保雨・整雨・配雨の各部位を有効にシステム化して雨水活用に必要とされる機能を有し、維持管理が容易に行え、環境への負荷が少ない。

2.株式会社プラネット(愛知県豊橋市):スマート花壇(認証レベル:シルバーレベル)

集雨・保雨・配雨の各部位を有効にシステム化しており、雨水活用に必要とされる機能を有し、維持管理が容易に行える。

写真2 京都学園大学の森本幸裕教授の基調講演

写真2 京都学園大学の森本幸裕教授の基調講演

基調講演と「雨にわ」づくり報告

森本先生は「京都における雨にわづくりの実践」と題する基調講演をされました。「京のまちに雨庭をつくろう!」の冊子シリーズで、第一回(雨庭とは?)、第六回(寺社の雨庭)、第七回(京都市内初の本格的な雨庭)にある実践例を紹介されました。現代都市は洪水の多発、ヒートアイランド現象、生物多様性の損失の問題がありますが、その救世主として「雨庭」が注目されていることを紹介してくれました。雨庭の仕組み、多様な効果、設置に適した場所探し、利活用の方法、ふさわしい植物についてなどを米国西海岸の事例や京都市内の多くの事例をあげられて、実践することの重要さを分かり易く説明してくれました。日本庭園はまさに雨庭の機能を十分に持っており、美しさも兼ね備えていることが良く理解できました(写真2)。

「雨にわ」づくり活動報告では、次のような話題提供がありました。

1.すみだ、雨の三十六景プロジェクト:雨水市民の会の笹川みちる理事ならびに会員の麓雄二さんが2017年9月~11月に東京都墨田区向島地域で実施した、「雨の日を楽しむアート」と「雨のつぼ庭づくり」の報告をしました。(詳細はWebあまみず記事)。

2.東京「世田谷」における雨にわとグリーンインフラ:雨まちサポの神谷理事長から野川流域や世田谷区内の雨にわの事例紹介がありました。野川流域における長年の湧水復活や雨にわの取組みにより緑が多く、憩いの場を実現した先進的な事例です。

3.福岡における雨水社会づくりあまみず社会研究会の角銅久美子さんが発表されました。2009年7月の福岡市内の樋井川水害をきっかけに市民の会が立ち上がり、2015年に九州大学を中心にあまみず社会研究会が発足しました。あまみず社会を実現するために、多世代・時間をつなぐ交流の場として、角銅さんの自宅を改築した「あめにわ憩いセンター」が2017年2月18日にオープンしており、あめにわ塾の開催や国内外からの多くの訪問者が来られたことの報告がありました。

コメンテーターとして、(公社)雨水貯留浸透技術協会の屋井裕幸氏から雨水活用が民間レベルでも推進しており、その要素技術として本日の基調講演や話題提供された「雨にわ」の実践を期待しているとコメントされました。さらに、国土交通省も雨水活用やグリーンインフラの普及・促進に、より強力なバックアップをお願いしたいと締めくくりました。

最後に雨まちサポの岡田誠之副理事長が閉会の挨拶をして終了しました。その後、会場近くのレストランで懇親会が盛大に開催されました。

なお、本記念セミナーに関しては、雨まちサポのホームページに関連資料が掲載される予定ですのでご覧ください。

*1 NPO法人雨水まちづくりサポート:日本建築学会の「雨水活用技術規準」の作成に関わった専門家が主体となって立ち上がり、「雨水の利用の推進に関する法律」の趣旨を踏まえて推進するため、「雨いえ」「雨にわ」「雨まち」づくりの技術的な支援や雨水の環境教育の支援を行うため、雨水技術者の育成や雨水活用の実践を評価する活動を行っている。

*2 雨水技術者認定:雨水活用施設の維持管理や設計監理の能力を有する技術者を認定する。維持管理部門、設計監理部門に分け、講習・考査を実施。

*3 雨水活用認証:雨水活用サイト(治水蓄雨、防災蓄雨、環境蓄雨、利水蓄雨の側面から評価)と雨水活用システム(雨水活用システムの評価)がすぐれた性能を持つことを認証する。

*4 雨水検定:雨水の一般常識や雨水活用技術の知識、雨水の歴史文化に対する見識などを検定する。