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報告:雨水活用シンポジウム「雨水の利用の推進に関する法律」がもたらしたもの

柴 早苗(理事)

interaqua2018InterAqua2018第9回国際水ソリューション総合展の最終日2月16日(金)に、表題のシンポジウムがビッグサイトで行われました。「雨水の利用の推進に関する法律」の施行から4年が経ち、どのような変化があり今後の展望はどうか、もうそんなに経ったのかという思いの中、4人のパネラーからの発表がありました。

「雨水の利用の推進に関する法律」の展開

今長岳志(国土交通省 水管理・国土保全局 水資源部 水資源政策課長)

国及び独立行政法人等が建築物を整備するにあたっては、原則として雨水利用のための施設を設置することと平成27年3月10日に閣議決定された。先行事例として、28年に大阪府堺市の警視庁近畿管区警察学校に雨水システムが導入された。設備棟の屋根に降った雨を地下貯留槽(容量18.5m3計画雨水利用量548m3/年)に溜め一定の処理をした後、井戸水も併用して敷地内の複数の建築物に配水し便所洗浄水や散水に用いている。その他平成29~30年にかけて約30棟で導入が進められている。

国として地方公共団体等への雨水利用の推進を促し必要な支援をする立場にあり、地方公共団体へのアンケートでは、都道府県の60%、市町村の25%が、条例、規則、要綱等の策定・運用等の施策を進めていることを把握している。しかし、この法律による実際的な推進自治体はまだ八王子市のみである。より実行性を高めるための支援として、都道府県方針や市町村計画のガイドライン案の解説や計画策定演習など、雨水利用推進に関する勉強会を行っている

埼玉県における雨水利用推進の取組

堤 清(埼玉県企画財政部 土地水政策課 水源地域対策担当 主幹)

埼玉県では、平成24年から29年の6年間で4回の渇水を経験するなど近年渇水が頻発している。一方、東部地域は利根川の河床よりも標高が低く浸水被害の発生しやすい地形であるため、その被害の低減化が課題である。その解決のため雨水活用を進めているのは、県内63市のうち既存の補助制度で雨水貯留施設の新設に補助する市が20市、浄化槽の転用への補助は13市、企業立地時の補助が1市となっている。(参考:埼玉県ホームページ「雨水(あまみず)の活用について」

県としては、新規に約1,330万円の予算を計上し、市町村施設への設置助成、市町村向けの補助金、事業所向けの啓発として事例集の作成を行っている。

防災・減災と雨水利用

三好祥太(株式会社ホクコン 営業企画部 事業推進チーム チームリーダー)

当社は福井県にあるコンクリートの二次製品を販売する会社で、各種インフラ整備に寄与している。雨水活用のメリットは、水資源、環境、洪水対策、防災と4つあると考え、中でも近年の多発する災害時のトイレ、水、電気問題に着目して製品の開発に努めている。特に避難所や防災公園で一番問題かつ重要とされたのがトイレであった。阪神淡路大震災における西宮市市民調査においても、生活用水(トイレ、洗面、掃除など)の確保が82.5%、飲料水、食料、粉ミルクの確保が71.5%となっている。「れいんクル」という上向流方式で動力不要の簡易ろ過装置を通して雨水貯留槽に溜め、平常時はトイレ水や散水に用いるが、災害時にはパッケージ化した処理により用途に応じた水質を確保し、生活用水や飲料水として給水するシステムを開発している。

雨水活用の将来像として、住宅では豪雨対策・雨水利用・再生可能エネルギー完全循環型住宅システムの導入、病院では雨水利用と再生可能エネルギーによる災害時孤立医療支援システムの導入、さらに農業でも同様の手法により高環境循環型農業の確立が可能なのではないかと考えている。

雨水を活かすまちづくり、ひとづくり

笹川みちる(特定非営利活動法人雨水まちづくりサポート 理事)

2018年2月16日にビッグサイトで開催されたInterAqua2018で、雨水活用について行政、企業、市民から活動報告があった。NPO法人雨水まちづくりサポートの理事の笹川笹川みちるさんは、雨水市民の会理事でもあり、当会や他の団体との連携を強めながら、水循環を回復するための活動の報告をした。

2018年2月16日にビッグサイトで開催されたInterAqua2018で、雨水活用について行政、企業、市民から活動報告があった。NPO法人雨水まちづくりサポートの理事の笹川みちるさんは、雨水市民の会理事でもあり、当会や他の団体との連携を強めながら、水循環を回復するための活動の報告をした。

雨を活かすまちづくりやひとづくりを行うNPO法人「雨水まちづくりサポート」の活動について報告した。地域の健全な水循環と緑豊かな環境の保全を目途に、降った雨をその場で受け止め浸透や蒸散を促し、ゆっくり下水等に流す行為を技術的に支援するため、2016年に設立され、雨水活用技術者の育成や雨水活用実践例の評価、並びに雨水の環境教育を行っている。活動の背景として、土台となる日本建築学会雨水活用技術規準や雨水の利用の推進に関する法律の普及への支援や、当雨水市民の会や公益社団法人雨水貯留浸透技術協会との連携に加えて、グリーンインフラの推進に鍵となる生き物や緑の保全に取り組む関係諸団体との連携を進めてきている。

昨年は、11名の雨水活用施設維持管理技士が誕生し、事業者の雨水施設の認証をサイトとして1ヶ所、システムについて2社を認証した。一般向けには雨水の環境教育として雨水検定を3月中旬に実施予定である。100㎜以上の雨をためる性能をもつ「雨いえ」、雨水ビオトープや屋上の雨水プランターを設えた「雨にわ」、道路や公園等公共空間に雨受け植栽帯等を導入した「雨まち」や、環境教育の連携事例として当会のすみだ雨の三十六景を紹介した。

 

屋井裕幸(公益社団法人雨水貯留浸透技術協会 技術部 部長)の司会によるパネルディスカッションでは、実際には徐々に雨活の意識は広がりつつあり、自治体での防災トイレの導入、企業のBCP対策、ゼロエネルギービル化などで導入例は増えつつある。さらに具体的な行動にまで結びつけるには施設導入への財源や補助の措置、関係諸機関・団体の連携、メリットの見える化も重要である。雨活のすそ野を広げるには、学校教育の中で雨活やグリーンインフラ等について知り考える試みもあったらよいといった意見が出た。

屋井氏は、いずれにしても、またこのような機会を設けて、雨活の現状把握と将来について語り合っていきたいと締めくくった。