ネットワーク

〜その5〜 パネルディスカッション「雨から見える未来」

Webあまみず編集委員

(第11回雨水ネットワーク全国大会 2018 in 東京レポート)

最後のプログラムは、「雨から見える未来」をテーマに神谷博氏がコーディネーターを務め、5名のパネリストが発言しました。以下はその概要です。

コーディネーター 神谷 博氏 NPO法人雨水まちづくりサポート理事長

パネリスト    栗原英人氏(下水道広報プラットホーム(GKP)企画運営副委員長メタウォーター(株)技監)

山本耕平氏(NPO法人雨水市民の会理事長・株式会社ダイナックス都市環境研究所代表取締役)

島谷幸宏氏(九州大学工学研究院教授・あまみず社会研究会代表)

笠井利浩氏(福井工業大学環境情報学部環境・食品科学科教授)

山海敏弘氏(国土交通省国土技術政策総合研究所住宅研究部長)

<パネルディスカッションの趣旨説明>

神谷氏:雨水ネットワーク設立10周年として、雨水活用はどこまで社会化されてきたか、雨水法の施行後の自治体の状況や住民への浸透度はどうかなどについて問題を見返し、今後の活動を議論していきたい。

<パネリスト自己紹介・問題提起>

栗原氏:国土交通省等に勤務し、平成19年度末に11名の各関連課長の連名で雨水活用に関して省庁間の横断的な連携を進めるという規約文書を取りまとめたが、現状では動いていない。日本は水の恩恵がある一方で、水の脅威もある。上手につきあえば、水の恵みを享受でき、下手につきあえば水の脅威を受けることになる。このことを踏まえると、“水を取り巻く水(雨)の自分ゴト化”、すなわち個人で取り組むこと、社会(地域、行政等)で取り組むことに関して、当事者意識を持ってそれぞれが力を出していくことが重要なのではないか。

山本氏:これまでを振り返ると、当会の地元、墨田区が中心となって2007年に自治体担当者連絡会ができ、それから産官学民による今の雨水ネットワークへとつながった。知識・意識(知水)、制度、技術等の多面的で有機的な連携が不可欠であり、各活動の目標や成果を持ち寄り、雨と共生する社会の具体的なイメージを共有しようと呼びかけた。墨田区には、すみだ環境ふれあい館という雨の環境学習の拠点が2015年まであったが、以降はそのフィールドが失われている。活動の目標を共有し、成果を共有しようと呼びかけ、制度やしくみを動かす主体(国、自治体、政治等)にもコミットしてネットワークを広げていきたい。

島谷氏:福岡のダムをつくる代わりに雨水を溜めようと運動する角銅さんたちのグループと関わって15年になる。2009年の7月の水害の後、9月に雨水ネットワーク会議を福岡で開催した。雨水社会をつくるには、分散型の水管理、水と緑による有機的な社会の構築が必要だが、漠然としたイメージでなく具体的な定量化が大切。個人の敷地で、流出抑制30%にすれば毎時100mmの雨を受け止めることが可能だとデータで示すなど、戦略的に攻めることが必要ではないか。

笠井氏:自分で米づくりを始めて水が大切だと実感した。雨水だけで生活する五島列島の赤島の紹介と島を活性化するため、新たな雨水活用のプロジェクトを実施している。島での水の使用量は60ℓ/日と東京都民の約3割。「蓄雨」に基づく雨まちづくりを目指して、島民の協力により雨水タンクを設置し、グーグルのストリート・ビューの制作、映画製作などで、広く知らしめたいと考えている。

山海氏:研究畑が長かった。資源エネルギー政策の見直しの基本方針をつくり、自立循環型住宅の提唱や、住宅の機能継続に最小限な資源エネルギーの使用をすることを提言している。例えばトイレの洗浄水を1/10~1/20程度にするなど住宅の機能として資源エネルギーの使用を最小限に抑えることを提言している。

<ディスカッション>

栗原氏:雨・水に関係しない行政部局はないが、現実的には連携は進んでいない。防災や下水道といった近視眼的な見方ではなく、未来のまちをどういうものにしていくか、未来のまちの自慢・誇りにつなげる仕事をしていくことを、携わる個々人が志向することではないか。

山本氏:首長にとって、水害はプライオリティは高いが、雨活は必ずしもが高くない。自治体を動かすのは「競争」であり、“水循環モデル都市“とか、SDGsの一つに選ばれたりするとステイタスが上がるように思う。

島谷氏:行政は大きなシステム・枠組みの変更はしたくないし諦めもある。本質的でやらねばならないことは実行が困難だ。まず、土や緑を信頼していない。もっとそれらに頼って建築物やハードのまちづくりをやっていくべきではないかと考えます。思想を共有できた個人宅や地域で自己完結型を目指すのはどうかと考える。

山海氏:公害関係では総量規制がなされ、水質汚濁防止法もあるが、雨水は法的枠組みでは遅れている。CASBEE(建築環境総合性能評価システム)でも節水くらいの評価しかできていない。評価の仕方は難しいが、雨や井戸水の有効性を評価する必要がある。

島谷氏:下水道においては、雨水は漏らし放題で良いと規定し、大規模な雨水貯留施設や雨水浸透施設に助成するという考え方を取るのはどうか。例えば1haの土地で10軒が流出係数0.3で雨水浸透すれば300tは外部に流出しなくなる。1件当たり300万円の補助金が出るならば、実現化できるのではないか。しかし、浸透は目にみえないので、流出係数や敷地面積を入れると定量的にどの程度効果的か、評価ができる市販ソフトなどを活用して、誘導していくことも意義がある。

山海氏:地震対策などより優先度は落ちるかもしれないが、雨水管理対策として民地の浸透や貯留などを規制の中に入れ込むのはどうだろうか。島谷先生のように専門知識を持つ人と市民、行政が連携することが肝要で、ネットワークの重要性はそこにある。

笠井氏:SNSなどを使って若者を取り込む、学生がどんな考えをしているかゲーム等で探る等、若者へのアプローチも重要。

島谷氏:子どもの興味を引くプログラム、自治体連合の復活、学会も小さなものでも皆で議論するよいが、皆で議論することなど、ネットワークの再構築が鍵ではないかと思う。

<会場との議論>

・武蔵野市や世田谷区では浸透ますの普及を図っている、浸透は見にくく、理解が得にくい。今後は雨庭やレインガーデンの設置を進めていきたいが、まだ実施には結びついていない。

・山海氏が、住民への説得や協力を仰ぐには、明確なエビデンスを示すことが重要ではないか。

・地域の未来について考えることもポイントではないか。福岡では、子育て世代の人たちと一緒に活動を進めている。広い範疇でつながりを持つため、川を媒体として、川で遊ぶ、楽しむ、花を植えるなど、色々なテーマで若い人たちと集い、緩やかな地域のネットワークをつくって、コミュニケーションを活発化している。

・(栗原氏)住民は雨の行く先が見えていない。雨庭にすれば何トンが浸透し、BODもこのくらい減るといった効果を示すことが必要ではないか。

小学校の元教員だが、学校では水再生センターや浄水場の施設見学を行い、環境教育の意識も高まっていると思うが、雨水に関しては認識が薄い。雨水市民の会で開発した『雨つぶぐるぐるすごろく』で遊んだりして、各人にとっての見える化を図るのはどうか。行動につながるものを目指し、エコスクールなどでも、水循環を入れないといけないと思う。

産官学民がそれぞれの立場で、相互にバックアップする必要がある。年を重ねた人たちは、べき論になりがちだ。環境学習のワークショップをよく行うが、子どもに対しては環境問題教育になっている気がする。実体験やものを作ったりしてみて、根っこの部分で納得できる、腑に落ちるような経験ができる仕掛けを考え、大人社会にもビルトインしていく必要があると思う。

・(島谷氏)国際的な連携により、自分たちの位置付けを明確にすることもできる。

・(神谷氏)いろいろな観点からの議論がなされたが、これらを踏まえ雨水活用の実践につなげてほしい。

第11回雨水ネットワーク全国大会 2018 in 東京 〜その1〜

〜その2〜 基調講演:「気象災害の犠牲者はなぜ減らないのか」

〜その3〜 国、市民、事業者、学会からの報告

〜その4〜 雨活レポート:福岡、松山、大阪、東京、東北、福井、愛知、東京、広島からレポート