ゼロメートル地帯・すみだでは雨水はしみ込まないのか?

尾崎昂嗣(合同会社アールアンドユー・レゾリューションズ代表社員・会員)

今回の発表は、下町×「すみだで雨水はしみ込むのか?」という疑問を元に、2026年3月30~31日に墨田区内の2ヶ所の区立公園で調査した結果です。Webあまみずにも掲載しましたが、この結果を受けてどんなことができるか考えてみたいと思います。

土中の水の状態

雨水浸透とは?

土の中の水はどのように存在するのでしょう。地表面から地下水(不圧地下水)面の間は土の空隙に水分の他空気も存在し、水が満たされていない状態=不飽和帯となっています。不圧地下水がある層は水が満たされている状態=飽和帯となります。

雨水浸透ではこの不飽和帯の水の流れをイメージすることが大切です。不飽和帯は地表面で植物が根を張っている「根群域」、水が重力により下方へ向かう「懸垂水帯」、不圧地下水で満たされている飽和帯の上部より毛細管現象により水が上部へ向かう「毛管水帯」に分けられます。

墨田区で浸透試験をした結果からの考察

墨田区は東京下町低地にあり、比較的地下水位が高く不飽和帯が薄い地域で、従来「浸透不適地」とされてきた地域です。

今回の現地試験において、雨庭を含む雨水浸透システムの設置が可能な透水性能が確認されました。詳細はwebあまみず(同じタイトルで2026/7/17アップ)掲載してありますので、ご覧ください。

その要因を考えてみましょう。

表層の人工的な土地の改変の影響も見落とすな

墨田区のような建物が密集して建つ地域では、建物の造成や道路などインフラ整備に伴い外部から持ち込んだ埋戻土や盛土等で表層を覆う場合が多く、元からある地盤とは異なる透水性能であると考えられます。また、元の地盤そのものの局所的な多様性も見逃してはならないでしょう。墨田区等の地域では、かつては河川流路に由来する自然堤防や砂州の後など、局所的に砂質地盤が分布する地点が確認されています。これらの地点は広域的な地質図では粘土質層として一括りにされがちですが、実態としては一定程度の浸透能力を持っている場合があります。

このことは、東京下町低地で、雨水を下水道等へ流出させる前にその場で浸透させることができるかが重要なポイントです。とくに、雨庭のように地表から30〜50cm程度の浅い層を利用する浸透設備では、広域的な地質分類に依拠するだけでは、人工・自然双方の要因による浸透能力を見落とすリスクがあります。したがって、このような地域では対象地の履歴や微地形を考慮し、表層レベルの現地浸透試験を行うことにより、その場所固有の特性を把握することが必要です。個別の地点の浸透能力に応じた柔軟な設計を行うことで、低地部でも実効性ある分散型雨水管理ネットワークの構築ができるでしょう。

下町低地でも分散型雨水浸透を広げていこう

従来困難とされてきた地域の墨田区で、今回の現地調査では表層レベルで雨水浸透システムの透水性が確認でき、今後雨水浸透システム導入の可能性が証明されました。一方で、場所によっては軟弱な粘性土層や高い地下水位を背景とした地盤沈下、あるいは液状化のリスクを抱えていることも忘れてはならないことです。このようなリスクと相まって、水害リスクの高い低地部において都市レジリエンスの強化につながる雨庭等の分散型施設を適地適所に配置するため、事前の現地試験によって各地点の潜在的な浸透能力を丁寧に掘り起こすことが重要です。

こうした取り組みは、大規模な浸水被害の抑制のみならず、合流式下水道区域における雨天時放流(CSO)の負荷軽減にも寄与するものであり、河川等の水環境改善に向けた有効な一助となります。今後も、地元の協力を得ながら同様の調査を継続し、各地の浸透能力の把握に努めたいと考えています。そして、この知見が他地域における雨水浸透システムの導入や、具体的な施策の展開に繋がることを期待したいと思います。