行政

水循環と雨水活用に関する法律ができました

あまみず編集部

平成26年4月2日に二つの法律が公布されました。一つは「雨水の利用の推進に関する法律」(以下「雨水利用推進法」)、もう一つは「水循環基本法」です。水循環基本法は2008年から学識者、市民、超党派の議員などにより設立された「水制度改革国民会議」が、縦割り行政の弊害を超えた水行政の統合的な推進を目指して検討を進めていたものです。

2011年8月に開催された第4回雨水ネットワーク会議全国大会2011 in 大阪では、この二つの法律を雨水活用法制度のテーマの分科会で議論し、大阪宣言が採択されました。少々長いのですが、紹介します。

  1. 飲水思源の発想に学び、下流が上流の水源に感謝し、上流が下流の水系の洪水に思いやる、「流域知水」を提唱します。
  2. 流域全体で、”雨水活用”による水源の自立を目指し、また、その水源を利用して緑を保全し、雨水を積極的に浸透させ、流域に豊かな水循環を取り戻します。
  3. ”雨水活用”を促進するための法制度や社会制度づくり、”雨水活用”の技術の発展や製品の規格化を推進する活動を展開します。
  4. 内外の先人たちの知恵と文化を掘り起こし、「流域知水」の取り込みに活かしていきます。
  5. 雨水のネットワークを活かして、流域や流域間での交流を深め、雨の環境体験学習プログラムによる雨の環境学習を推進し、地域や学校で雨水キッズを育てます。
  6. 酸性雨や雨の汚染は、私たち人間が原因です。この現実をしっかりと受け止め、汚染の元を断ち切り未来にきれいでおいしい雨水を伝えます。

まさしく、今回の二つの法律が言わんとしていることを表しているものでした。

この二つの法律についてポイントをご紹介しましょう。

水循環基本法のポイント

  • 水を「国民共有の貴重な財産」と位置付ける
  • 政府は水循環基本計画を定め、5年ごとに見直す
  • 内閣に水循環政策本部(本部長=首相)を置く
  • 政府と自治体は森林、河川、農地、都市施設などを整備する
  • 政府は水循環に関する研究開発を推進し、研究者を養成する
  • 8月1日を水の日とし、政府と自治体はその趣旨にふさわしい事業を実施する
  • 公布から3か月以内に施行

水循環基本法の背景には、北海道、群馬、神奈川、長野などの森林で地下水の開発を目的とするグローバルな売買がされたり、土地所有者の不明化が問題視されこと、また、危機感を持つ自治体で独自に水源地域保全条例や地下水保全条例などを制定する動きが進んでいたことなどがあげられます。これまで、地下水については限定的なエリアの規制しかありませんでしたが、5年ごとに策定されることになる水循環基本計画には、地下水も対象として計画に盛り込まれると思われます。

雨水利用推進法のポイント

  • 雨水利用の促進に関して国や地方公共団体等の責務明確化
  • 国土交通省は、基本方針として推進の意義、利用方法、健康影響等雨水利用に際し配慮すべき事項、推進に関する施策の策定等を定める。都道府県は国の基本方針に即して都道府県方針を定める。市町村は、国及び都道府県方針に即して計画を定める
  • 国・独立行政法人等及び地方公共団体・地方独立行政法人による自らの雨水利用のための施設設置に関する目標設定と公表
  • 国及び地方公共団体は、災害時における身近な水源としての雨水の有効性を含め、雨水利用推進に関する普及啓発
  • 国は雨水利用に係る技術、規格等に関する調査研究及び技術者・研究者育成に努める
  • 国による雨水利用設置施設への税制上又は金融上の措置
  • 地方公共団体による助成制度と国による財政上の支援
  • 平成26年5月1日施行

今後、水循環基本法や雨水利用推進に関する様々な動きが出てくると思われます。国や身近な自治体でも計画、普及啓発、助成制度などについて関心を持ち、場合によっては意見を言う機会を持ちましょう。

 

 

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