2019.12.14
サバイバル飲み水(2)・風呂の残り水
雨水市民の会・水質調査プロジェクトチーム
災害時の飲み水には、水質が良好な雨水が一番ですが、雨水タンクを持つ家は少ないのが実情です。二番目は、入浴剤や薬品、洗剤などが使われていないことが前提として、水道水を使って沸かしている風呂水です。100 ℓ以上確保できます。100 ℓとは、サバイバル時に4人家族が7日間必要とする飲み水です。
風呂の残り湯を飲み水にできるかと聞かれたら、汚いものと感じて受け入れられない人も多いでしょう。しかし、元の水が水道水ならば、それは家族の垢やお尻の周りの細菌などが入り込んでいるだけです。風呂の残り水のゴミと細菌を取り除けば飲み水になるのではないかと考え、雨水と並行して飲み水を作る実証実験と並行して行いました。
ろ過実験の概要
1.入浴直前の浴槽の湯をサンプリングして冷蔵庫に保管した。
2.夜に大人4人が入浴した。
3.翌朝まで蓋をして風呂桶に放置し、サンプリングして冷蔵庫に保管した。
4.風呂の残り水の上澄みを120ℓ、粗(あら)ろ過(*1)して、サンプリングした。
5.中空糸膜ろ過(*2) で、50ℓ及び100 ℓろ過した後のろか水をサンプリングした。
6.その日の夕方に検査機関へクール便の宅配で配送し、翌日検査機関に到着。
*1 粗(あら)ろ過:風呂の残り水は入浴者の汚れが入っているほか、一晩置いて細菌が繁殖した状態と思われ、中空糸膜ろ過の負荷を軽減するため、1ℓ当たり20秒の速度でろ過を行った。手提げ付きレジ袋の底に穴を開けて枠取りしたものに、ろ材としてエアコン用フィルター(ポリエステルなどの繊維状シート)をくるくる丸めて棒状にして、立体多層膜として、ろ過を行った。なお、前述の「サバイバル飲み水(1)・雨水」では、雨水は大変きれいだったので、粗ろ過は行わなかった。
*2 中空糸膜ろ過:手提げ付きレジ袋にポット型浄水器のカートリッジ(三菱ケミカル・クリンスイ製CPC5W-NW)を手提げ付きレジ袋に絶対に水漏れしないように取り付けたものを自作。このカートリッジは精密ろ過の中空糸膜で、無加圧、自然流下でろ過速度が早く、長期間の耐久性が認められたので使用した。なお、この実験は、災害時を想定しており、この製品の機能を応用しているもので、メーカーの製造者責任の範疇外の使い方をしている。
検査結果
水に溶ける塩化物イオンなどはろ過できませんが、100 ℓろ過時点で一般細菌、大腸菌などのバクテリアは中空糸膜で完全にろ過ができました。ろ過に余力があり追加ろ過が可能。すなわち、風呂の残り湯100ℓ以上をろ過することで4人家族が1週間以上、サバイバルできます。
ろ過には限界がある
今回使用した中空糸膜カートリッジは、メーカーのカタログ値では0.1μm(1万分の1ミリメートル)以上の大きさのものをろ過できます。主に細菌、カビ、胞子、原生動物などが除去できますが、ウィルスは基本的には通過してしまいます。また、膜は目詰まりするまで機能しますが、イオンなどの溶けているものは除去することはできません。活性炭は、色、臭い及び一部の化学物質を吸着しますが、その機能には限界があります。これらのことをわきまえて、飲み水にするかどうかを自分で判断する必要があります。
細菌の全てが病気を引き起こすものではない
また、細菌が出たからとあわてる必要はありません。その出所を見極め、推測することが大事です。大腸菌は人の腸管内に普通に生息し、ほとんどは病気を起こす菌ではありませんが、人の糞便には大腸菌が大量に含まれるため、糞便性汚染の指標として使われています。もし、糞便が飲料水に混入すると、感染症を起こす細菌がいるかも知れず、広範に伝染する可能性があり大変危険です。災害時には検査ができないので、元の水に糞便が入る可能性があるかを見極めることが大切です。
一般細菌は、水道水の塩素の消毒効果を確認する検査項目です。大腸菌と対になった指標菌です。水系伝染病予防のために、1mℓ当たり100個以下と厳しい基準があります。もし、水道水から一般細菌が基準以上に検出されたら途中で汚染されている可能性もあります。しかし、生活している環境中では一般細菌がいるからと言って、人に害があることにはなりません。人は雑菌の中で生きており、いない方がおかしいのです。ちなみに、お店で売っている惣菜などの基準では1g当たり100万個以下(食品衛生法等)と決められていて、水道水の一万倍の許容度です。
Webあまみず:「サバイバル飲み水(1)・雨水」