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たもんじ交流農園での”菌ちゃん農法”講演会に参加して

高橋朝子(Webあまみず編集担当)

多聞寺にある”たもんじ交流農園”

東武スカイツリー線鐘ヶ淵駅から歩いて10分のところにある多聞寺は、墨田区役所が発行する『墨田の雨水利用 Guide & Map』で「雨水寺」として紹介されています。雨水をためて参拝客のトイレに使ったり、墓参の水に使ったりしています。この多聞寺の協力により無償で借りている敷地に、NPO法人 寺島・玉ノ井まちづくり協議会(通称「てらたま」)が運営する”たもんじ交流農園”(墨田区墨田5-30-9)があります。多聞寺の雨水タンクのオーバーフローや周囲の家の屋根から雨水を集める雨水タンクを備えており、「Webあまみず」で2回紹介したことがあります(活動記録2018/04/25,ネットワーク2019/04/15)。てらたまは江戸野菜の寺島なす復活を目指す団体ですが、墨田区のふるさと納税を活用したクラウドファンディング(すみだの夢)で「まちなか農園プロジェクト」の活動をしています。2022年に墨田区で「市民緑地認定制度」が条例化され、てらたまが「みどり法人」の認定、”たもんじ交流農園”が「市民緑地」として墨田区で初めて認定されました。

農園の周囲から雨を集める雨水タンクが置いてある

活動地域が重なっていることもあり、雨水市民の会の会員でもあるメンバーも数名います。そうした関係から雨水市民の会の会員に”菌ちゃん農法”の講演会参加の呼びかけがありました。”たもんじ交流農園”では無農薬で野菜づくりをしていますが、病害虫に悩まされていたそうです。”菌ちゃん農法”とは、糸状菌(いわゆるカビやキノコ)の力で土中の微生物を増やして土を豊かにすることで、野菜が元気に育ち、その結果、農薬や肥料が要らない農法です。てらたまでは長崎県佐世保市で菌ちゃんふぁーむの運営と普及活動をされている吉田俊道さんを招いて、”菌ちゃん農法”の土づくりをすることにしました。

2023年1月20日(金)、”たもんじ交流農園”の一角で実践講座が始まりました。吉田講師は長靴を履き作業着姿です。すでに畝を高く盛り上げ、周りに溝が掘ってありました。古竹、枯葉、木片などが置いてあり、準備万端です。「畝は膝上くらいまで土を盛り上げ、ふっくら土の中に空気がたまるようにして。」「古い竹は白い糸のような糸状菌がいっぱいついている。その上に枯葉、モミガラ、木片などを層にして重ね、最後に薄く土を乗せ、ジョウロで水を撒き、マルチシートを被せて重しで押さえておく。所々空気穴をあけ、2、3ヶ月放っておくと糸状菌が土全体に増えてくる。これで土が元気になる。」ユーモアたっぷりの長崎弁を聞きながら受講生たちはせっせと作業をしました。隣家のご夫婦がベランダで面白そうに眺めていました。

左)枯れた草や籾殻を乗せる 中)古竹に生えている糸状菌 右)最後にマルチシートをかけて2〜3ヶ月待つ

多聞寺の会議室で吉田俊道講師によるレクチャー

次は多聞寺の会議室で講義です。吉田講師の話を簡単に紹介します。菌ちゃん農法で育てた野菜は、化学肥料を使いハウスで育った野菜と比べ、味も美味しく栄養もたっぷり。野菜が元気だと病害虫は付きにくく農薬もいりません。土の中には1g中に10億以上の生き物がいます。化学肥料を使った場合は生き物の餌が少なく、生き物もいなくなり、野菜の根は貧弱なままです。菌ちゃん農法で作った土では、野菜は網の目状に根を巡らせ、膨大な微生物などと接し土の中で共生圏を作ります。糸状菌は窒素固定細菌と共存しており、他の様々な菌も関与して、土がふかふかになって、野菜の必要とする養分を供給してくれます。糸状菌は空気を好み、排水が悪いと空気の通りが悪くなって土の生態に悪い影響があります。固くなった土は菌が棲む15cmくらいの深さまで浅めに耕し、排水を良くすることから始めます。生ごみは漬物のような乳酸菌や酵母で発酵させてから土に入れた方が良いということです。

雨水市民の会で行っている「下町×雨・みどりプロジェクト」は雨水活用とみどりを組み合わせた「NbS」(Nature-based Solutions=自然を基盤にした解決策)を普及させることを目指して、まちなか「水循環」を市民レベルで取り組んでいます。てらたま協議会のたもんじ交流農園の活動は、まちなか農園を自分たちが食べる野菜を土づくりから行おうとしています。土の環境は水環境より複雑で、「循環」という表現より「生態系のバランス」と言った方が良いかもしれません。今回の講座を受講して、これもNbSの一つだと思いましたが、自然の仕組みについて人間はほんの一部を知っているだけで、未知の世界だと実感しました。