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第9回雨水ネットワーク全国大会2016 in 東京 (報告その2) 8/6(土) 雨水トーク

Webあまみず編集部

大会2日目は、午前中は.三木千壽大会会長(東京都市大学学長)によるあいさつの後、基調講演及び対談、お昼からは「ゆめあめ情報ひろば(展示・ワークショップ)」とその情報の共有化のためのミーティングが行われました。また、夜は参加者の交流を深める「ゆめあめ交流会」がにぎやかに開催されました。

基調講演「歴史と地域に学ぶグリーンインフラと雨水のマネージメント」 涌井史郎*1氏

基調講演をされる涌井史郎氏(東京都市大学・特別教授)

基調講演をされる涌井史郎氏(東京都市大学・特別教授)

気候変動により雨の降り方は極端化し、方や洪水などが激甚化し、方や渇水が起きやすくなっています。これまでは設備や土木事業などで対処してきていましたが、今後このような方法では、多大の費用が必要となり、開発途上国では不可能な事業です。そこで、自然を活用したり、ライフスタイルを変える「適応」策(=グリーンインフラ)が重視されています。アメリカやEUでも様々な取り組みがされています。とくに米国オレゴン州ポートランドでは、雨水を中心に総合的・広域的環境マネージメント(例えばグリーンストリート*などを計画的に配置)していることは、大いに参考にすべきです。日本では、歴史的に見ると、江戸の水道システムや排泄物の堆肥化などの循環システム、竹田信玄の「信玄堤」、加藤清正の「鼻ぐり井出」、二次的自然である里山を手入れしながら自然の恵みを享受する暮らし方など、自然共生の文化が根付いています。涌井氏は、2020年、東京で再度のオリンピックが開催される。過去の歴史的文化や技術を踏まえ、グリーンインフラを基盤に「ニュー江戸東京」として世界に示すことに価値があると考えていると結びました。

*1 涌井史郎:現在、東京都市大学特別教授、岐阜県立森林文化アカデミー学長、なごや環境大学学長などを就任、造園家としての涌井雅之氏としても有名。

中村桂子*2氏と涌井史郎氏の対談

対談「雨水トーク」をされる、中村桂子氏(JT生命誌研究館館長)及び涌井史郎氏

対談「雨水トーク」をされる、中村桂子氏(JT生命誌研究館館長)及び涌井史郎氏

生命誌研究者として有名な中村桂子氏は、涌井氏の基調講演の感想を聞かれ、「地球は48億年続いており、涌井さんのおっしゃるような危ないということはない。生物は38億年生きており、これも危なくはない。人類が地球を危なくしており、滅びるのは人間です。」

涌井氏は、生命史観からすると、まさしく中村氏が正しい、自分は文明史観に毒されていたと返しました。続けて、中村氏は、生命にとって最も大切なのは水であり、人間も生き物である以上大切なものは水であるはずが、機械と火を使って効率を大切にしてきた結果、高層マンションで育ち自然に触れることができない子どもたちが増えていることを危惧されています。生物の多様性を支えている小さな生き物へのまなざしを持つことは、人間が小さなものに支えられた生き物であるという自覚をするために、大事なことです。例えば、土はミミズがいないとできません。土と水はつながっていて、生物ともつながっています。

涌井氏は、中村氏の発言を受け、生産・消費・分解の3要素を多様な生物が機能分担して見事な地球のシステムを作り出しているが、人間が肥大化して維持できなくなってきており、私たちはこのシステムに如何に上手に同化していくかを考えなければならないと指摘。水をマネジメントするということは、生命のシステムを考えることであり、生物多様性を考えることで、すなわち生命をマネジメントすることに近いと締めくくられました。

*2 中村桂子:JT生命誌研究館館長。生命史研究者。

ゆめあめ情報ひろば

雨水活用に関わる研究者、学生、企業、市民団体(当会も2つのワークショップ実施)などの展示(8月5~7日)やワークショップ(8月6日午後)を行いました。ワークショップ終了後は、その成果を共有化するミーティングが行われました。

■ワークショップ&展示

  • すごろくで遊ぼう!ぐるぐるめぐる雨つぶの旅(NPO法人 雨水市民の会)
  • 雨水と水道水をくらべる実験(NPO法人 雨水市民の会)
  • 二子玉川ライズで生育している絶滅危惧種・カワラニガナの値段を試算(一般社団法人 生物多様性アカデミー)
  • 二子玉川ライズビル・ルーフガーデンの雨水活用によるせせらぎや池の水質調べ(一般社団法人 生物多様性アカデミー)
  • 日韓連携グリーンインフラの意見交換(法政大学エコ地域デザイン研究センター)
  • 楽しくグリーンインフラを学びましょう(千葉大学園芸学研究科 風景計画学研究室 江暁歓)
  • 雨水の旅の展示、雨降りと雲の実験(東京都市大学)
  • 顕微鏡写真によって目で見る水質(一般財団法人 材料科学技術振興財団)
  • 「蓄雨」の解説アニメーションの紹介(日本建築学会 雨水活用推進小委員会)

■展示のみ

  • 雨水浸透施設及び雨水タンク助成制度について(世田谷区土木部 土木計画課)
  • 二酸化炭素固定化算出ソフトi-Tree Ecoに対する評価(国士舘大学都市システム工学科  北川研究室)
  • 多摩川とその流域の紹介(多摩川流域懇談会)
  • 野川流域の活動紹介(野川流域連絡会)
  • 東本願寺と環境を考える市民プロジェクト(東本願寺と環境を考える市民プロジェクト)
  • 雨水活用の普及に向けて~雨水活用施設等データマップの利用~(公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会)
  • はじめよう、雨水利用!(雨水利用事業者の会)
  • 多摩川は身近な自然のタカラ箱 多摩川で遊び、学び、自然を知りましょう(NPO法人 せたがや水辺デザインネットワーク)
  • 雨活アイデアコンテスト2016(ライオン株式会社)

ワークショップ報告会の後、今回の全国大会の参加者の交流会が行われました。

ゆめあめ情報ひろばで行われた展示やミニワークショップ。 左:雨水と水道水の水質実験(雨水市民の会) 中:ぐるぐるめぐる雨つぶの旅。すごろくで誰もが水循環を体験(雨水市民の会) 右:雨降り&雲の実験(東京都市大学)

ゆめあめ情報ひろばで行われた展示やミニワークショップ。
左:雨水と水道水の水質実験(雨水市民の会) 中:ぐるぐるめぐる雨つぶの旅。すごろくで誰もが水循環を体験(雨水市民の会) 右:雨降り&雲の実験(東京都市大学)

(報告その1)8/5(金) 雨水セミナー (報告その3)8/7(日)あめまちツアー 全国大会を終えて

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