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第9回雨水ネットワーク全国大会2016 in 東京 (報告その1) 8/5(金)雨水セミナー

Webあまみず編集部

連日約150名が参加した第9回雨水ネットワーク全国大会 2016 in 東京(東京都市大学 二子玉川夢キャンパスにて)

連日約150名が参加した第9回雨水ネットワーク全国大会 2016 in 東京(東京都市大学 二子玉川夢キャンパスにて)

雨に関わる市民、行政、企業、学術の情報交換や活動交流の場として2008年に設立された「雨水ネットワーク会議」は、昨年の愛知県長久手市での全国大会で「雨水ネットワーク」と名を改めました。

3回に分けて「今年は、東京・世田谷の二子玉川の東京都市大学夢キャンパスで、8月5日から7日(日)に開催されました。今回のテーマは、「めぐる水 活かす人 潤うまち~雨から始めるグリーンインフラ~」とし、雨水活用や雨水管理を自然の力で賢く活かしていくための議論や普及の方法について新たな展望を描き、発信しました。3日間で600名を超す方々に来ていただきました。今回、当会の取材として3回に分け掲載し、実行委員会委員長の中川清史氏に「大会を終えて」を寄稿していただきました。また、実行委員会として雨水ネットワークホームページに、報告書を近く掲載する予定です。

特別講演「雨水活用で防災・減災~あまみず社会の実現に向けて~」 講師:島谷幸宏氏(九州大学大学院教授)

特別講演をされた島谷幸宏氏(九州大学工学研究院教授)

特別講演をする島谷幸宏氏(九州大学工学研究院教授)

福岡では、2009年に第2回雨水ネットワーク会議全国大会を経て、その年に市内を流れる樋井川が氾濫しました。島谷氏たちは、洪水の怖さを目の当たりにした流域住民を中心的に組織して樋井川流域市民会議を立ち上げ、雨水活用、土地利用などについて住民が関わって流域の治水をめざして活発に活動しています。島谷氏は、ご自身の研究、「分散型の水管理を通した、風かおり、緑かがやくあまみず社会の構築」の目標とする骨子を説明しました。行政の縦割り、分断化している水システムを補完する意味で、流域内は雨水の貯留・浸透を行い、治水、利水、環境、緊急時の総合的な水管理を提案していきたいそうです。講演の中で、特に興味をひかれたのは、福岡大学にあまみず科学センター、あまみずキャラバンカーを設置し、子どもから大人まで水に関心を持って理解してもらう姿勢でした。机上の研究ばかりでなく、地域住民とコミュニケーションを取り、幅広い視野から研究されており、研究結果の成果が期待されます。

5つの話題提供

次に、以下の5名が話題提供されました。

●「世田谷区における住民参加の公園づくり」 稲垣豊氏(世田谷区みどりとみず政策担当部公園緑地課建設担当係長)

世田谷区が住民参加の公園づくりを始めたのは、昭和40年代、この10年間では約50か所の公園について150回のワークショップを行っている。手間と時間がかかるけれど、地域住民に愛着ある緑地となり、管理運営に関わってもらうことで貴重な緑の保全、創出が実現されている。

●「二子玉川のまちづくり」 都甲義教氏(東京急行電鉄株式会社都市創造本部営業事業部二子玉川営業推進課長)

二子玉川駅の東側の再開発は、昭和57年に検討が始まり、30年間以上かけ、約11.2ヘクタールについて、平成22年度に駅前商業施設、オフィス、マンション等が竣工、平成27年度に高層オフィス、ホテル、映画館等が竣工した。また、すぐ隣の区立二子玉川公園と連携し、世界初のLEED・ND(新築ビル部門)でGOLDの認証(雨水再利用・自然換気など)を取得した。2015年竣工のビルには、約8000㎡の緑地を整備し、雨水利用したビオトープではミナミメダカやイシガメを放していて、最近は野鳥も訪れ始めている。

●「災害時の雨水利用~これまでの災害を振り返って~」 笠井利浩氏(福井工業大学教授)

阪神・淡路大震災では水道が断水し、その解消には10日間で50%、全戸が通水するには2カ月かかった。このときに、水洗トイレが使えず住民は大変不便な思いをした。しかし、被災地にも雨がふり、災害時には雨水利用は生活用水の大変有効な水源になる。そのため、広く一般の方に雨水が持つ清浄な水質や十分な水量について知ってもらうことが重要であり、雨水ネットワークでの取り組みが重要である。

●「下水道施設における雨水利用について」 岩井聖氏(国土交通省水管理・国土保全局下水道部流域管理官付課長補佐)

いわゆるゲリラ豪雨が頻発・激甚化しており、浸水被害が毎年発生している。従来の下水道だけでは対応が難しくなり、平成27年の下水道法改正により、流出抑制のために雨水の貯留施設の整備などを促進する制度が創設され、また、平成26年3月に制定された水循環基本法や雨水の利用の推進に関する法律により、雨水の有効利用や流出抑制に寄与する取り組みが下水道等に設置される施設にも求められている。下水道施設では雨水貯留施設を活用した事例がある。

●「グリーン・インフラへの取り組み~『多自然川づくり』から日本型グリーン・インフラのあり方を考える~」 堂園俊多氏(国土交通省水管理・国土保全局河川環境課河川環境保全調整官)

グリーン・インフラとは、平成27年8月に閣議決定された「国土形成計画」で、社会資本整備、土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるものと定義されている。多自然川づくりはその一環として明記されている。今後「グリーン・ナショナル・マネジメント(緑を活用した国土管理)」という概念の方が実態になると思われ、多自然川づくりではコンクリート製品を上手に活用したハイブリッド型グリーン・インフラが重要となる。

パネルディスカッション「めぐる水、活かす人、潤うまち 雨から始めるグリーンインフラ」 コーディネーター:栗原秀人氏(下水道広報プラットホーム)

「めぐる水 活かす人 潤うまち」をテーマに行政、企業、市民の3グループに分かれて分科会が行われた。

「めぐる水 活かす人 潤うまち」をテーマに行政、企業、市民の3グループに分かれて分科会が行われた。

行政、企業、市民グループに分かれてグループディスカッションがされました。今後の方向性として、行政グループでは、「防災」をキーワードに取り組みのベクトルを合わせていきたいが、市民や企業からいろいろな雨水活用情報や施設の維持管理技術のハウツーなどの情報提供が必要だという声がありました。企業グループでは、行政が誘導する形で防災などと絡めて制度化してほしいと要望があり、企業も技術者の養成や費用対効果のアップも必要とのことでした。市民グループでは、雨水活用の普及のために連携や活動の人的養成を進めていくことが求められていると話し合われました。

各グループのファシリテーターが討議内容をまとめて発表し、栗原氏のコーディネートにより、パネルディスカッションが進められました。雨の分野からグリーンインフラを率先してやることで、多面的評価をして、制度化していくべきであること、その効果を見える化し社会的賛同を得ていくこと、また、とくに市民レベルでは楽しく長続きできる活動によって支持層を広げることが必要であることなどの意見が出ました。

雨にわフェア・「雨の庭づくりデザインコンテスト」

8月5~6日の開催期間中に、二子玉川公園内で雨水活用やグリーンインフラの製品や実際の「雨にわ」を展示していました。雨水活用のグリーンインフラでは、駐車場を緑化して浸透したり保水したりする活動をしている団体や、雨水タンクの展示がありました。

雨の庭づくりデザインコンテストのためにミニ雨にわの展示もありました。準備期間が短く、3点と応募が少なかったのが残念でした。コンテストの結果は報告(その3)にあります。

(報告その2)8/6(土)雨水トーク (報告その3)8/7(日)あめまちツアー 全国大会を終えて

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