下町×雨・みどり

「全国まちづくり会議2022 in 東京・すみだ」に参画

柴 早苗(雨水市民の会理事)

認定NPO法人日本都市計画協会が主催する「全国まちづくり会議2022 in 東京・すみだ」が、「まちづくりの原点を探る」をテーマに千葉大学墨田サテライトキャンパスで10月8〜9日(土・日)に開催され、当会もブース出展とともに2つのイベントを行いましたので報告します。

2022年10月9日に千葉大学墨田サテライトキャンパスで開催された「全国まちづくり会議2022 in 東京・すみだ」では「市民から始まる雨とみどりのマイクロインフラ」と題したセッションを行なった。

10月8日は、NPO法人 向島学会が主催するまち歩き6コースのうち1コースを、当会の笹川みちる理事、高原純子理事が防災と雨水活用の観点から京島・向島地域の路地尊を巡って案内しました。

翌9日の午前中は、「市民から始まる雨とみどりのマイクロインフラ」セッションをリアルとオンラインで行いました。当会の理事2名を含めた4名で討議されました。

「これまでとこれから」 鹿島田和宏(墨田区環境担当部長)

都市型洪水をきっかけに墨田区で雨水利用の取り組みが始まり、1985年竣工の両国国技館への雨水利用設備導入から、1995年の雨水利用促進助成制度等へと、10年程度で結果を出してきた行政の取り組みを振り返りました。そしてこれからは、激しい気候変動の最中、ゼロカーボンシティに向けて雨水を使った輻射冷房の家の奨励など、新たなSDGsにつながる取り組みを職員のやる気と勢いを引き出し進めていきたいと語りました。

「地域で雨をいかす路地尊」 佐原滋元(一寺言問を防災のまちにする会(以下「一言会」と略)、当会理事)

最初に、近年一言会が力を入れている、子供たち対象の路地尊を巡る「カエルキャラバン」の動画を視聴しました。路地尊は、災害時の飲み水、水害の被害を防ぐ、まちの緑を増やす、防火(初期消火)といった役割を期待されてできた雨水利用施設です。一言会の地域には1988年の路地尊2号基に始まり、有季園の3号基、会古路地の4号基、はとほっとの5号基、2006年の一言集会所の6号基と、5基の路地尊が順次設置されました。地域住民が協議して、「路地尊」と命名し、各路地尊の名前も自分たちで考え、そのイメージをデザイナーに振るという地域主導型で進めました。

「非常時と日常の暮らしから考える水と緑の防災まちづくり」 金谷直政(かなや設計・環境建築家)

地元の京島にある「協和井戸端広場」では、井戸、パーゴラ、マンホールトイレ、ベンチなど防災用の設えがあります。二度の大震災を経験して、この地域で非常時は路地尊では足りないと思い、枯れない水をなんとかしようと、地域で2016年に水活用勉強会を開始しました。具体案を2年後に区に提案して2021年3月に竣工しました。

また、環境建築として設計したシェアハウスは、防災井戸と冷暖房に地中熱を利用しており、日本エコハウス大賞2022奨励賞を受賞しました。その他いくつかの環境やデザイン関係の賞を受賞も得ています。12年前に建てた、壁面や屋上に緑化を施した事務所兼住まいの自宅は、大きいガラス窓の解放感からまちに開かれた印象でよく話しかけられ、まちの人たちとのつきあいも深まって、今では町会長を任されています。

「下町×雨・みどりプロジェクト」 笹川みちる(当会理事)

当会が進めている下町×雨・みどりプロジェクトの概要を説明しました。その基となるグリーンインフラやNbSの考えは、2015年国土形成計画に盛り込まれ、2021年の国交省グリーンチャレンジの重点施策にもなっているという説明がありました。

登壇した各氏(敬称省略)左から佐原滋元、金谷直政、鹿島田和宏、笹川みちる

ディスカッション

「まちづくりとスケール」「まちづくりと暮らしの豊かさ」「100年後に残せるまちとは?」という視点で進められました。

(佐原)一言会の地域では、盛んな路地園芸の調査を行い、植木鉢の一鉢ずつに植えられている植物を調べました。そこでわかったのは、緑と水が小規模分散していて、在来種が多く肥料もいらないこと。天水尊をつけ水やりに雨水を用いるお宅は、SDGsをさながら実践しているといえます。

(鹿島田)墨田区では単身者が人口の半分以上を占めていて、ごみ出し一つでも地域の話し合いが難しくなってきています。羽毛のリサイクル、ユーカリの繊維でつくった靴など、環境負荷を減らす取り組みが社会に受け入れられるようアンテナを高くしつつ、住民の意見も取り入れながら行政を前に進めることが求められています。

(金谷)私は気密性、耐火性の住宅などを造る仕事ですが、少しストレスを感じて生き物に触れたい思いで、現在のところに引っ越しました。3人の子供に1本ずつ果樹(ブドウ、モモ、ミカン)の世話を任せたところ、実のなる木はまちの人たちとの会話も育み、道路と住まう人との関係性なども考えるようになりました。

(佐原)私は普段、百花園の茶亭におりますが、会場隣の百樹園と同じくらい木々が多く、夏は周りより2、3度気温が低いと実感しています。また打ち水大作戦は一言会地域が日本で初めて実施しましたが、国交省の進める風呂の水ではなく雨水を使うことにしました。自宅では屋根に雨水を流し、エアコンの設定温度を1度程度以上下げています。「墨田浄水場」をつくり、雨水を飲み水レベルの水質にして地域ブランドのボトル水として販売するのはどうでしょうか!

→(笹川コメント)飲めるほどに清浄にした水をトイレに流している現状はもったいない、ウォッシュレット用の水は肌に触れるため別配管にする必要があるなど、水の用途について使い分けの知識を多くの人が持つことも大切です。

(笹川)本プロジェクトを基に雨水タンクのスマート化を図れたらと考えています。墨田区全体で雨水貯留施設の容量は現在26000トンにもなります。大雨の前に雨水貯留槽につけたセンサーによって自動的に空にしたり、アプリで所有者にタンクを空にするよう促す。タンクを空にした人にポイントを付与し、それを地域通貨として使用できるといったインセンティブがあるとうまく運用していくのではないか。環境省のアンケートでも、お得だったらやるという人が8割以上という結果となっています。

  →(鹿島田コメント)役所も関わって楽しくやれたらと思います。

最後に、思いついたことは一言いおう、緑と空(そら)を意識できる京島をつくる、雨水を活かしたまちのしくみづくりに関与できたら、と三人三様の言葉で締めくくられました。