下町×雨・みどり

関東大震災100年後に建った京島三丁目北町会会館『吾嬬町ウエスト』の雨水活用

Webあまみず編集部

雨水市民の会は、昨年から「下町×雨・みどりプロジェクト」において「小規模分散型雨水管理モデル」を創出するため、東京都墨田区の京島地区で活動をしています。京島地域の活動を始めるにあたり、40年以上の歴史がある「京島地区まちづくり協議会*」との話し合いやまち歩きも行いました。

小規模分散型雨水管理モデルとは、一人ひとりの小さな積み重ねで雨を蓄え、みどりを育みながら、地域防災や地域活性化イベントと連動して、安全で心地よく暮らせるまちづくりを目指す取り組みです。雨水市民の会では米国コカ・コーラ財団の助成を受けて雨水タンクや雨水プランター、レインガーデンなどの普及を進める「下町×雨・みどりプロジェクト」を2022年〜2025年に実施しています。

京島地区の一角に「京島三丁目北町会」があります。その町会長の金谷直政さんは、環境建築を手掛ける一級建築士です。雨水市民の会とのお付き合いもあり、2022年10月8〜9日に開催された「全国まちづくり会議2022 in 東京・すみだ」内で当会が担当した「市民から始まる雨とみどりのマイクロインフラ」のセッションではパネラーも務めていただきました。前述の京島地区まちづくり協議会の一員でもあり地元のコミュニティやまちづくりの活動に尽力されています。

2022年8月に金谷さんから移転新築予定の京島三丁目北町会会館に雨水スポットを創出できないかと相談がありました。町会ではさまざまな手法で下記の要件を満たす開館の実現に道筋をつけました。

①木密地域で防災の拠点として機能するため警察や消防署並みの耐震強度を持つ

②町会のコミュニティのシンボルの神輿を納められるスペースを確保して、祭りの準備の手間を省力化する

③建築コストをできるだけ抑え、会館以外の部分は地主さんが所有され賃貸で賄い、町会部分は旧町会会館の売却と区役所からの補助金を使って賄う

雨水活用に関しては、緑化や散水に使うほか、防災拠点として非常用水にしたいという意向がありました。敷地が狭く雨水タンクを置くスペースが少ない中、当会の「下町×雨・みどりプロジェクト」の目的である、雨を少しでも敷地内にためる仕組みを実現するためにアイデアを出し合い、屋外階段の下部分に沿わせてパイプ状の雨水タンクを設置する案が生まれました。

左)パイプ型雨水タンクの設置工事をする鎌田芳久さん
右)外構部分は枕木と砂利を敷き、雨を浸み込ませる

アイデアを具現化したのは、当会の会員の鎌田芳久です。鎌田さんは、三鷹市で水道工事業を営んでおられ、以前から塩ビ管で作った雨水タンクの実践に取り組んでいます。「なんとか作ってみましょう」と、階段下にパイプ型雨水タンク(容量:約180リットル)を吊り下げるという前代未聞のタンクに挑戦を引き受けてくださいました。約40㎡の屋上に降った雨をため、水圧を利用して町会会館のトイレの流し水に使用します。

また、外構部分もコンクリートで固めず、砂利と枕木で仕上げて、雨水を地表面にためることになりました。

10月15日(日)には新たにネーミングされた『吾嬬町ウエスト』の落成式が行われました。直前まで雨が降っていましたが、落成式が行われる時には雨は上がり、式は地元の大勢の人たちが見守る中、墨田区長や隣町の町会長さんたちなどの挨拶、子どもたちによるブドウの記念植樹がされました(ブドウの木が大きくなったら階段の外側に這わせるためのネットも設置されています)。これらの式典は、道路を挟んで、交通整理をしながら行われ、京島地域ならではの心温まる雰囲気でした。

左)2023年10月15日に行われた吾嬬町ウエスト(京島三丁目北町会会館)落成式
右)子どもたちによる植樹際(ブドウの苗)

金谷町会長から感謝状を受け笑顔の高橋事務局長

最後に、金谷町会長さんから雨水市民の会に感謝状を授与され、ありがたく頂きました。

ちょうど100年前、関東大震災が発生しました。当時は田園地帯だった京島地域は比較的被害が少なかったのですが、木造の建物が立て込んでいた本所地域等では火災で大勢の方が亡くなりました。大きな災害がある時にはこの町会会館が近隣の住民の心強い拠点となるでしょう。

*京島地区まちづくり協議会:墨田区京島二丁目、三丁目の住環境改善や防災の向上を目指して、1981年より住民の自助努力による不燃化促進、道路拡張、コミュニティ施設を整備している。ポケットパークやコミュニティ住宅には路地尊が多数設置されている。協議会の中に2016年に「水活用勉強会」を立ち上げ、防災井戸の必要性を墨田区へ提案し、2018年に「協和井戸端広場」(京島2-26)が竣工した。

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