下町×雨・みどり

下水道台帳から雨の流れをたしかめるワークショップ

3月25日(土)、雨水市民の会事務所近くの寺島集会所で、榊原隆さん(雨水市民の会会員・八千代エンジニヤリング株式会社)を講師に招き、下町×雨・みどりプロジェクトの「まち」と「水」を知る連続ワークショップ「地下の「流域マップ『下水道台帳』を読み解いて、雨の流れをたしかめよう!』を開催しました。

お山に降る雨は谷筋を流れ、小さな沢、大きな沢となって川へ流れ、そのゆくえを見ることができます。しかし、まちに降る雨はすぐに下水道に入り、見えなくなってしまいます。一体、地下では雨水はどのように流れているのでしょうか?実際に見ることはできませんが、地面の下の雨の流れを知る方法があります。東京都では下水道局が下水道台帳*を公表しており、誰でもホームページで閲覧できます。これを使って雨の流れを辿ることができます。

*下水道台帳:雨や汚水を流す設備は、公共の部分を「下水道」、宅地内や私道は「排水設備」と呼びます。公共の下水道については、管理を行う自治体などで台帳を作成し、下水道の位置、深さ、管の大きさ・種類、公共ますの位置などを記録しているます。流れの方向や「合流式」「分流式」などの方式も台帳から読み取ることができます。東京都ではこの下水道台帳をインターネットで公開しています。

合流式下水道の問題点

下水道には汚水と雨水を同じ管で集める合流式下水道と別々の管で集める分流式下水道があります。東京23区では82%が合流式で、比較的早い時期に敷設された墨田区は全て合流式下水道です。合流式では、大雨が降ると下水を処理している水再生センターでは処理しきれない分を、未処理のまま川や海に流す仕組みとなっており、この越流水が水質汚濁の原因となっています。墨田区の下水は江東区にある砂町水再生センターまで流れ下り処理されています。平坦なゼロメートル地帯にあるため、汚水混じりの雨水が強制的にポンプ所(墨田区には隅田、業平、両国、吾嬬、吾嬬第二の計5ヶ所)から川に放流されることになります。

また、地球温暖化による気候変動の影響により、豪雨の頻度が増加しており、合流式下水道では下水管が溢れる都市型洪水の脅威が迫っています。河川や下水道関連の行政機関ではその対策も取られていますが、市民レベルでも雨水をためたり浸透させたりすることが求められています。

分流式下水道と合流式下水道(東京都下水道局ホームページより)

京島地域の雨の流れをたしかめよう!

班に分かれて下水管の流れを確認し発表した(写真提供:榊原隆氏)

現在、雨水市民の会で進めている下町×雨・みどりプロジェクトでは墨田区の京島地域を対象に雨水タンクや雨どいプランターなどの雨水貯留とみどりを組み合わせた拠点作りを進めています。今回のワークショップでは京島地域の雨の流れをたしかめました。榊原講師の解説で基本的な読み取り方を学んだ後、3つの班に分かれて、東京都下水道局のホームページから下水道台帳を開き、墨田区京島一丁目から三丁目の雨水の流れを紙ベースに書き入れて確かめました。見慣れない網目のような管路図を読み解くのに、少し時間がかかりましたが、地上からは想像がつかない複雑な流れがあることがわかりました。

参加者からは下記のような気づきや疑問の声があり、それに対する考察や長く地元に住む参加者からのコメントも交わされました。

  1. (1) 同じ道路の下でも、ある地点を境に違う向きに下水が流れる場所がある
  2. (2) 場所によっては下水道管が通っていない空白地帯がある
  3.  →大きな敷地を分譲して私道路を通していたのではないか
  4. (3) 線路の下は管が通っていないところが多いが、一部横切っている場合もあるがなぜか
  5.  →線路を横切って下水管があるところは、昔、川が流れていた。下水道を先にできた線路の下を通らせることは難しかったが、川の部分は容易に工事できたからではないか
  6. (4) 幹線に向かって合流を重ねがら、だんだん深いところへ流れていく
  7. (5) 必ずしも近くの幹線に流れるとは限らず、別の方向に流れることもある
  8. (6) 大きな流れとして、京島地域の汚水は、網目模様の複雑な管路から、曳舟通り他2ヶ所の管路に集められ、明治通りの砂幹線に流れ、江東区にある砂町水再生センターに向かう

日頃、目に触れることがない地下の水の流れを確かめることで、地形やまちの歴史も紐解くことができました。今後、ワークショップで分かったことや疑問点を整理し、京島地域の下水道流域マップを完成させる予定です。

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