下町×雨・みどり

雨水スポットみて歩き「京島・雨仕舞ウォーク」

Webあまみず編集部

下町×雨・みどりプロジェクトでは、すみだ向島EXPO 2022(以下EXPO)*と連携し、10月16日(日)に、墨田区京島地区で「京島・雨仕舞ウォーク」を実施しました。雨仕舞(あまじまい)とは、建物からスムーズに雨を流す仕掛けを指す建築用語ですが、今回のまち歩きでは、雨の流れをイメージしながら建物を見て歩く視点を表しています。改めて雨どいに注目しながら、雨のゆくえを考え、雨の流れが見える仕掛けや、雨どいからの雨水を蓄えるプランター、ミニガーデンなどの可能性に思いを巡らせました。大人14名、子ども2名の総勢16名が参加しました。

京成曳舟駅近くに集合し、京島地区に点在する路地尊やこれから雨とみどりのスポットを設置する候補地、EXPO関連施設を含めたポイントを見て歩きました。

京島・雨仕舞ウォーク(2022年10月16日)での立ち寄り先

当日のルートから主なスポットを紹介します。まず、駅前のマンション「イーストコア曳舟」の路地尊**を見ました。ハンドル式手動ポンプで雨水を汲み上げられるようになっています。京島地域の路地尊の多くは、「何某一休」と命名され、京島地区まちづくり協議会と町会が愛称をつけたという説明が添えられています。ゆずテラスは、地元のかなや設計が手掛けた防災型シェアハウスで、散水への雨水利用のほか、井戸と池があります。オーロラキッチンは、ガレージをリノベーションした自然派カフェで、当プロジェクトの一環で、入口横に雨どいからの雨を導くミニガーデンを設置予定です。

EXPO関連では、次の場所を見てまわりました。

  • ・新築長屋の模型:来春完成予定の現代長屋の模型を予定地に展示。設計者がまち歩きに参加してくださり、雨・みどりスポットの一つとして検討を進めることになりました
  • ・雨水風呂:EXPO実行委員長の後藤大輝氏が制作。2階のタンクから滝状の雨水を浴槽に注いで入浴できる仕組みになっています
  • ・ウラダナ:路地裏にある古い平屋長屋。道路に開放された雨どいは、デザインの余地がありそうです

左から「ながつま一休」「こぞう一休」「キラ前一休」の路地尊。それぞれ10トン、9トン、40トンの雨水タンクがあり、手押しポンプで汲み出すことができる。

左から「イーストコア曳舟の路地尊」「新築長屋の模型」「オーロラキッチン」「雨水風呂」「ウラダナ」

最後に旧邸稽古場にて、参加者で今回のまち歩きを振り返りました。主なコメントをご紹介します。

  • ◇鉢植えの緑を楽しみ、雨水の貯留箇所も多く、防災意識も高いことがうかがえる地域であり、雨水活用がさらに広がる可能性を感じた
  • ◇何某一休(路地尊)があちこちにあるが、新しいポンプに付け替え、かえって使いづらくなったものもあった。
  • ◇タイのバンコクで仕事をしているが、海抜が低く地下水が浸み込まないところなので、こちらの取り組みを紹介したい。
  • ◇多くの若い芸術家が京島に移住しており、建物の外壁へのアートの制作や長屋に様々な工夫を凝らし楽しんでいる。雨水を風呂にするアイデアを実現したり、EXPOの拠点「京島駅」では池で金魚を飼い、今後は雨水を池に入れたいと話していた。
  • ◇ウラダナのような古く老朽化した建造物もまだあって懐かしかった。
  • ◇学生で、今回EXPOに出展している。大学の授業では、まちに対する青写真を描いて提案して終了することが多いが、卒業後に実践する機会があり、関われるプロセスは貴重。
  • ◇米国西海岸のシアトル市に在住。現地では、住宅の雨水流出やエネルギー消費量を建設計画時に提出し、許可を得る必要がある。住宅でも雨水を貯留、浸透をして、敷地からの流出量を抑制することが求められている。日本では、自治体によっては一定規模以上の開発では、そのエリアからの流出量制限があるが、住宅レベルでは非常に限られている。

*すみだ向島EXPO2022:2022年は2022年10月の1ヶ月間開催した「街中の博覧会」。今年で3年目となった

**路地尊(ろじそん):墨田区内に設置されている地域で共有する雨水貯留施設。隣接した公共施設や住宅に降った雨を地下に貯め、手押しポンプで組み出して使うことができる。

« »