下町×雨・みどり

「すみだのSDGsをもっと知ろう!〜雨でデザインする下町ライフ」すみだ地域学セミナーの報告

Webあまみず編集部

墨田区のSDGsの取り組みとユートリヤの雨水活用

まちなかを歩いていてもSDGsという言葉やイラストなどをよく見かけます。雨水市民の会でもイベントやパンフレットで使っています。当会は雨水活用の運動を始めてから約30年経ちますので、古くからいる会員は「私たちの活動って、実はSDGsを先取りしていたんだ」と言っています。当会の事務所がある東京都墨田区は、実は全国的に脚光を浴びています。墨田区は、2021年度の内閣府が選定する「SDGs未来都市」に、さらにその中でも先導的な取り組みとして毎年度10都市が選ばれる「自治体 SDGs モデル事業」に選定をされました。これを受け、区での取り組みにますます”熱い”注目が集まっています。

雨水市民の会事務局から歩いて10分ほどのところにある「すみだ生涯学習センター」(別称「ユートリヤ」)の館長さんから相談を受けました。「当館は、210立方メートルの雨水タンクが地下にあり、雨水利用をしているのですが、地下にあるのでなかなか利用者の皆さんにはわからない。市民の方にもっと知ってもらいSDGsの取り組みの一つとしてパネルを展示したいので、アドバイスをいただきたい」もちろん、制作したのはユートリヤのスタッフです。パネル展示中に、ちょうど雨水市民の会で調布市の中学校の生徒さんたちや地元向島学会主催のまち歩きのご案内をして、雨水タンクの見学もさせていただきました。

ユートリヤでは、墨田区に纏わる歴史・文化・人物・産業・まちの変遷などをテーマに地域の魅力を再発見する「地域学セミナー」を毎年行っています。今年度のテーマは「すみだのSDGsをもっと知ろう!」(4回シリーズ)で、その一コマを雨水市民の会で行って欲しいとの依頼がありました。

地域学セミナーでの講演

講座は、12月11日(日)に開催され、当日は20名が受講されました。まず、笹川みちる理事が「下町×雨・みどりプロジェクト〜雨でデザインする下町ライフ」として話しました。都市型洪水への対等が発端となった墨田区の雨水活用や、安全な飲み水が得られない世界の地域の水事情などを話し、みんながこれからも安心して暮らし続けるための目標(SDGs)に向けた市民の取り組みとして、現在進行中の下町×雨・みどりプロジェクトでの雨水活用シンボルスポット(小規模分散型雨水管理モデル)を墨田区京島地域に展開し、その効果の検証をする提案をしました。まさに市民によるミニダムです。

次に、ユートリヤのスタッフの方たちの案内で、地下駐車場下にある雨水タンクを実際に見学をしてもらい、会場に戻ってきてから高橋朝子理事による雨水の水質測定や実験をしました。雨水は実際にユートリヤで当日採水したものを使いました。受講の皆さんは実際に見て、その水質を調べることで、より実感が湧いたようでした。

雨水の水質というと酸性雨*を思い浮かべる人も多いでしょうが、会場で測定したpHは7.1でした。比較のため、近くにある雨水市民の会事務局前の天水尊(樹脂製)は6.6、水道水は6.9でした。ユートリヤはコンクリート製雨水タンクですので、中和効果が働いたようです。次に電気伝導率**を測定しました。水に溶けている物質が多いと電気が通りやすくなって高い値となります。測定値は47μS/cm(マイクロジーメンス毎センチメートル)でした。同じように天水尊では68μS/cm、水道水は280μS/cmで、雨水は溶けている物質が少なく、天然の蒸留水です。これらの測定を踏まえ、最後に水道水と雨水の泡立ち実験をしました。水道水との違いに受講の皆さんが驚いていました

*酸性雨:工場、車などの排気ガス、火山ガスなどから排出する硫黄酸化物や窒素酸化物が雨等に溶けて酸性に傾く。雨や雪などに溶け込んで降る「湿性沈着」と、乾いた粒子が降る「乾性沈着」を併せて「酸性雨」と呼ばれている。降り始めの雨は大気中の汚染物質が溶け込んで酸性度が大きく(pHは小さく)、降水全量ではpHは上がる傾向。

当会が2015年7月から2016年6月に実施した雨水タンクの水質調査では、樹脂製タンクではpHは4.4〜7.7(平均6.4、33検体)、コンクリート製では5.8〜9.8(平均7.5、23検体)と、ばらつきがかなりある。ちなみに電気伝導率は樹脂製とコンクリート製では差がほとんどなく、120μS/cm以下が9割を超えていた。(”Webあまみず”:2016/12/26「雨水はきれい!〜大気汚染物質と微生物を探る〜雨水タンク水の精密検査結果の報告〜その1」及び2017/08/30「雨水タンク水の精密検査結果の概要報告」)

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