下町×雨・みどり

雨水タンクは洪水防止に役立つか? 〜雨水タンクの見える化

雨水タンク見える化部会(雨水市民の会)

墨田区の雨水タンク貯留量は2ミリ分の雨に相当

図1 すみだの雨水利用マップ編(墨田区役所HPより一部掲載。青い点が雨水タンクの場所)

墨田区で雨水利用が始まった経緯は、1980年代に錦糸町や両国などで大雨により下水道から溢れて、大きな被害があったことから雨水をためて利用しようと始まりました。1994年の雨水利用東京国際会議を機に、1995年には「雨水利用の推進指針」を策定し条例や要綱により指導を行なった結果、30年経った現在、墨田区では801箇所、総貯留量26,780㎥の雨水タンクがあります(2024年3月現在。図1参照)。仮に、大雨に備え墨田区の雨水タンクを事前に空にして雨水を受け入れたとすると、26,780㎥÷13.75㎢(墨田区の面積)=1.9ミリとなります。つまり、約2ミリ分の雨をためられることになります。

「2ミリって洪水防止に役に立つの?」と思われるかもしれませんが、東京都豪雨対策基本方針(2007 年8月に策定され、2014年6月、2023年12月と2回改定されている)によると、気候変動に伴う1.1倍の降雨量に対応するため目標降雨を都内全域で1時間あたり10ミリ引き上げるとしています。10ミリのうちの2ミリとなるならば、墨田区はすでに5分の1は達成しているのですから、意味がある値です。

雨水利用は洪水抑制にならない?!

図2 全国アメダス1時間降水量50ミリ以上の年間発生回数(気象庁より)HPhttps://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html

現状では、墨田区に降る雨は下水道へほとんど流れていきますが、前述した約40年前のような下水道から溢れる洪水は起こっていません。下水道は下水管が満杯で排水口や下水マンホールから噴き出して洪水になるのを防止するため、下水道幹線に一定程度以上の雨水が入り込んだ場合は下水の上澄をポンプ所から河川へ放流しています。墨田区では5ヶ所のポンプ所のうち4ヶ所で隅田川や旧中川に放流しています。

ポンプ所が充実しているから、雨水タンクは必要ないのかと思われるかもしれません。東京都が豪雨対策基本方針を2回も改定した理由は、強い雨の割合が増加傾向にあり、これまで行政側の対応だけでは難しくなってきています。最近の10年(2015〜2024年)の1時間降水量50ミリの平均発生回数は、約40年前の10年間(1976〜1985年)の約1.5倍に増加しています(図2)。今後はさらに増加が予想されており、行政だけでは限界があり、これからのまちづくりや既存の施設でも対応が求められます。

また、洪水に至る雨量でなくとも大雨が降った時は、下水道が100%普及している墨田区ではほとんどの雨は下水道へ流れていきます。まとまった降雨があった時や断続的な雨がある時は、ポンプ所では月に多いときで数回〜10回放流しています。例えば2021年7~9月(約90日間)で隅田川に放流する3ヶ所のポンプ所では合計52回の放流がありました。ポンプ所のおかげで洪水は少なくなったのですが、雨で薄まっているとはいえ汚水混じりの水が日常的に河川に放流されているのです。洪水になるほどの大雨でなくとも、雨水タンクによる流出抑制が働けば、合流式下水道の越流水問題*にはかなり寄与できると考えられます。

*合流式下水道の越流水問題:下水道には、私たちが使った水(汚水)と雨水を一つの管で流す「合流式下水道」と、汚水と雨水を分けて流す方法は「分流式下水道」の2つの方式がある。合流式下水道では雨水で下水道管が満杯となって洪水にならないように、一定量以上の下水(雨水と薄まったとはいえ汚水が混ざった状態)は河川等へ放流する仕組みを持つ。この越流水による水質汚濁が問題視されている。

「流せば洪水、ためれば資源!区内に眠る雨水フル活用計画」

大雨が予想された時、雨水タンクを空にして備えれば良いのですが、利用する立場からはタンクに雨水をためておきたいのが心情でしょう。大雨の予報があるからタンク水を捨ててしまって、予報が外れたら損をすると思う人もいるかもしれません。まして、トイレの洗浄水や消防用水に使っている場合は、完全に空にすることはできません。

雨水タンクに洪水抑制機能を持たせるには、タンクの水位を把握して、どこまで下げられるか個々に対応する必要があります。しかし、ビルなどの比較的大きい雨水タンクは地下にあり水位計も設置していないところが多いです。ビルの利用者は雨水を活用していることも知らないし、管理者もいちいちマンホールを開けて水位を確認ことは大変です。これでは雨水タンクは流出抑制の機能が期待できず「眠る雨水タンク」となってしまいます。

当会では、「雨水タンクの見える化」を進め、雨水活用していること広く知ってもらい、流出抑制の機能に活かしていきたいと、2023年度から墨田区が始めた「資源循環・地域連携促進助成事業」に応募して、当初は雨水活用施設であることをパネル等で利用者に周知を図ろうと考えていました。そんな矢先に2023年12月に東京ビッグサイトで開催されたエコプロ2023で出会ったのが、「RisKma」を開発された建設技術研究所の方たちでした。

雨水タンクの水位がスマホでリアルタイムに分かるアプリ:RisKma

図3 RisKmaのアプリでスマートフォンから雨水タンクの水位がリアルで分かる

RisKmaは、36時間先までの雨量分布予報などをリアルタイムで配信したり、2〜3時間先までのゲリラ豪雨予報を知らせる機能があるインターネット上のアプリです。主に自治体の河川や下水道の水害担当の部署で利用されていますが、「雨水タンクに?」と建設技術研究所の担当の方が興味を示してくださり、「では、一つテストで入れてみましょう!」という運びになりました。

幸いすみだ生涯学習センターの協力が得られ、2024年3月に210㎥の地下タンクに水位計を入れて測定開始となりました。しかし、地下駐車場からの電波が弱く、正しく水位が測れません。試行錯誤してようやく現在は正しい水位が把握できるようになりました。他、地上式の雨水タンク11㎥があるお寺、7㎥の地下タンクがある集合住宅、そして雨水市民の会の事務所前の小型タンク2基にも設置し、現在5ヶ所の墨田雨水タンク版のRisKmaが見られるようになりました(図3)。

水位が分かるという他、実際に雨水タンクがここにあると人々が認識することが大切です。すみだ生涯学習センターのご協力の縁から2024年6月に同センターの園芸部が水やりや道具洗いに雨水タンクが欲しいという要望があり、200リットルのタンクをワークショップで設置しました(webあまみず2024.07.24)。施設利用者の目に入り、雨水利用をしている施設であることが一目瞭然となりました。

今年度は墨田区の助成の最終年です。この仕組みを墨田区全体に広めたいのですが、水位計や電波の発信装置が河川等の過酷な環境でも耐えられるようにしてあり、かなり高価なものです。建設技術研究所の方たちに、もう少しコンパクトで安いものができないかを検討していただいています。

小さな雨水タンクでも面的に広がれば、流出抑制が期待できます。みんなで取り組む雨水活用、みんなで取り組む流出抑制という動きにつながっていくと確信しています。

« »