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”雨水法”周知シンポジウム~その1~雨水法の概要について

あまみず編集部

満席になった「雨水の利用の推進に関する法律」周知シンポジウム。2014年10月8日、中央大学駿河台記念館にて実施。

満席になった「雨水の利用の推進に関する法律」周知シンポジウム。2014年10月8日、中央大学駿河台記念館にて実施。

2014年5月1日に「雨水の利用の推進に関する法律」(以下「雨水法」という。)が施行されました。現在、国では「基本方針」を作成中であり、それを受けて都道府県が「方針」、市町村が「計画」を策定することになります。今、この法律をどう活かしていくのか、これから産官学民がそれぞれにどう取り組んで仕組みとしていくかが問われている重要な時期です。待っていても、国が全てを担ってくれる訳ではありません。

雨水ネットワーク会議世話人会(*1)では、時代が大きく動こうとしているこの時期に、雨水法の周知と今後の雨水活用普及活動の展開について活発な議論をする契機として、「雨活新時代を迎えて~雨水とその利用推進法の活用を考える~」シンポジウムを、2014年10月8日(木)に中央大学駿河台記念館にて開催しました。(編集部)

◆水循環健全化に向けて議論を深めよう

元国土交通省水資源部長 日本大学客員教授 細見 寛(ほそみ ゆたか)

水循環基本法と雨水法は、私が2年前に水資源部の部長をしていた時に、議員が国会に提出したのが始まりです。1998年、私が事務局をしていた河川審議会の水循環小委員会の答申では、「水循環健全化」の言葉を初めて使い、雨を溜める・浸透させる・ゆっくり流すという価値観が提示されました。1995年の阪神・淡路大震災のときに火災が起き、消火のための水がなくて死亡者の約1割の600人が火災で亡くなりました。これは震災により水供給の機能が麻痺して、それに代わる水が身近になかったためです。都市はこれまで表面にあった水辺や雨を排除してきたのが実態です。それを身近かに再び取り戻し、水循環を健全化していかなければならないでしょう。

水資源政策は、過去に様々な問題があり、総理が陣頭指揮を執っていた時代がありました。水資源部は、経済企画庁時代は調整役となっていましたが、国土庁に移ってからは、水質は環境庁、資源は国土庁と分断され、現在は環境省、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省の5省が関わりを持って、調整が大変です。

今回、水循環基本法施行により、内閣官房に総理直属の水循環政策本部をおき、来年に向けて基本計画の策定の途上にあります。それまでに、原点に立ち戻って議論したいと考えています。

◆雨水法の概要と国での今後の方向

国土交通省 水管理・国土保全局 水資源部 水資源政策課 企画専門官 吉田成人

雨水法は、議員立法により提出され、2014年4月2日に公布、5月1日に施行れました。近年、気候変動に伴い時間50㎜を超える降水量の日数が長期に増える傾向で、都市部では、下水道や河川等に雨水が集中し、都市機能を麻痺させたり、地下空間が浸水する「都市型洪水」が多発しています。

「流せば洪水、受けてためれば資源」という考えのもと、雨水を一時的に貯留して、水洗便所の用、散水の用や消火や防水のための備蓄等への使用により、水資源の有効な利用を図り、あわせて下水道、河川等への雨水の集中的な流出抑制に寄与することが期待されます。

国及び政令で定められた107の独立行政法人等を対象に、建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する「目標」が定められることになります。

また、国土交通大臣は雨水の利用の推進に関する「基本方針」を定めることとなっており、この基本方針に即して都道府県は「都道府県方針」を、基本方針と都道府県方針に即して市町村は「市町村計画」を定めることができることとなっています。

国が考えている施策は、①国等の自らの雨水利用の設置に関する目標設定、②広報活動等に通じての普及啓発、③調査研究推進、技術者等の育成、④雨水利用設置の税制上・金融上の措置、⑤地方公共団体の目標設定と助成などです。

*1 雨水ネットワーク会議世話人会:雨水利用自治体担当者連絡会・雨水利用事業者の会・公益社団法人雨水貯留浸透技術協会・一般社団法人日本建築学会・NPO法人雨水市民の会(アドバイザー:国土交通省・環境省)

 

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