活動記録

2014/3/2(日)  雨塾パート2「気象現象きほんのき~知っているようで知らない気象の話」

あまみず編集部

講師をされた平沼洋司さんは、朝日カルチャーセンターで気象予報士講座の講師もされておられます

講師をされた平沼洋司さんは、朝日カルチャーセンターで気象予報士講座の講師もされておられます

最近の気象現象をちょっとおかしいと考える人は多いと思います。すべて温暖化が原因なのでしょうか。そう考える前に通常の気象のメカニズムの基本を知っておくことが大切です。

笠井利浩准教授による雨塾パート1「雨水活用から考える”本当のエコ”」(2014/03/28更新のWebあまみず)に引き続き、東京ガス環境おうえん基金の助成を受けて、2014年3月2日に雨塾パート2を開催しました。気象予報士の平沼洋司さんをお招きし、基本的な事象について説明を受けた後、質問に答える形で内容を深めながら講義をしていただきました。さまざまな質問に自在に丁寧に答えていただき、もやもやとした「なぜ?」がすっきり解消された気分でした。また、気象は身近な現象ですが、奥が深いと感じました。主なポイントをご紹介しましょう。

偏西風の蛇行と気象

地球を取り巻く空気は太陽の熱で暖まりますが、赤道方面では暑くなり、北極や南極方面では寒くなっています。この気温差を解消しようと、南の空気を北へ、北の空気を南へ運び、同じ温度になるように動きはじめます。北半球の上空を流れる西風(偏西風)の蛇行がその動きであり、地上では低気圧の発達や台風の襲来であったりします。

この気温差がより大きければ、気象現象は激しくなり異常気象などになったりします。この冬の2度の大雪も偏西風の蛇行で北の冷たい空気と南からの空気が日本付近で低気圧を発達させたためだったのです。このような複雑な要絡んでいますが、その基本についてみていきましょう。

気象現象は気圧・気温・水蒸気の3つで説明できる!

気象とは、地球を取り巻く空気(大気)の振る舞いです。大気の圧力である気圧は地球規模で風と関係が深く、大気の温度である気温と大気中に含まれる水蒸気、その3つの要素の組み合せで風が吹いたり、雨や雪が降ったりしています。

空気の重さ=気圧

空気は、私たちが生きていく上で無くてはならないものです。目に見えず感じることもできませんが、ちゃんと空気にも重さがあります。空気は地球表面を高度数10㎞ほどの層状におおっています。その重さは1㎠あたり約1kgになり、1㎡なら約10トンにもなります。気圧は、その場所の上空にある空気の重さ(質量)のことで、hPa(ヘクトパスカル)で表されます。私たちの暮らす地上はほぼ、1気圧=1013hPaです。1013hPaを換算しなおすと、10.3トン/㎡の空気の重さであるということが分かります。

高気圧では晴れて、低気圧では雨になるのはなぜ?

高気圧は晴れて低気圧は雨になるのはなぜ

高気圧とは周りより気圧が高いところで、低気圧は周りより気圧の低いところです。空気は圧力の高いところから低いところへ流れていきます。これが風であり、気圧の差が大きいほど風は強くなります。私たちの住む北半球では、地球の自転の影響で、高気圧からは時計回りに風が吹き出し、逆に低気圧には反時計回風が吹き込むことになります。

また、高気圧では空気が流れ出ていくのを補うように上空から冷たく重い空気が高気圧に向かって下降してきます。下降する冷たい空気は途中で次第に暖まり空気が乾いてくるのです。このため途中の雲も消え晴れてきます。

一方、低気圧には、周りの気圧の高いところから風が流れ込んできます。中心付近では、暖かい空気が上昇気流になって上昇します。上昇する空気は、周りの空気の気温が低く気圧が低いため、膨張しながら冷えていき、含まれていた水蒸気が飽和に達して、凝結します。その氷の粒が集まって雲となり、成長して雨となって降ります。

降雨のメカニズム

氷水を入れたコップは、外側に水滴がたくさんできます。コップの周りの空気が冷やされ、空気中の水蒸気が水になったためです。雨もこの原理で降ってきます。

まず、雲となるには、水蒸気を含んだ空気が上昇することが(上昇気流)必要です。上昇気流は、①地面が日射で暖められる、②低気圧に周りから空気が吹き込む、③風が山などにぶつかり山の斜面に沿って上昇する、④暖かい空気と冷たい空気がぶつかり暖かい空気が持ち上げられる、などの現象によっておこります。こうして水蒸気を含む空気が上昇し、高度があがるにつれ気圧が低くなり、空気は膨張して冷えていき、空気中の水蒸気は水になります。これが雲のもとです。そして、空気中の塵やほこり、海塩の粒など(凝結核といいます。)に水分が集まり、雲粒ができます。

雲を形成する雲粒の大きさは、半径0.01mm程度であり、それが100万から800万個集まると、半径1~2mmの雨粒となり降ってきます。雲は見た目が真っ白なので、雲粒がびっしりと詰まったもののように見えますが、実はそうではありません。雲の中は隙間だらけで、雲粒をピンポン玉の大きさに例えれば、6畳間に2~3個あるくらいの状態なのです。この段階では衛突する確率が低すぎて、雨粒にはなれません。

しかし、夕立などでは突然に大粒の雨が降ってきます。雲の中で何が起こっているのでしょうか。上空の5000m以上では通常は氷点下です。そこでは雲粒も氷の結晶(氷晶)になっています。しかし、雲粒の中には0℃以下でも凍らずに水のままでいる水滴(過冷却水滴)があります。これが雨をつくる重要な役割を担っています。氷晶と過冷却水滴がー緒にあると、過冷却水滴が氷晶のまわりに付着して大きな氷晶になります。雲粒の衝突と過冷却水滴の付着という2つの作用で、氷晶は大きく成長して、やがて雨となって落ちてきます。

冷たい雨・暖かい雨

大気が氷点下で、雲粒が氷晶か過冷却水滴になっている雲から降ってくる雨を「冷たい雨」といいます。このようにしてできる雨は日本などの寒帯地や温帯地方に多く、また、氷晶が融けずにそのまま成長して降ってくるのが雪です。一方、雲の中が0℃以上で、雲粒が水滴だけでできている雲から降ってくる雨もあり、これを「暖かい雨」といい、熱帯地方に多くできます。

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