2017.04.07
雨水利用に関する地方自治体の情報
小川 幸正(雨水市民の会理事)
雨水利用に関する主要自治体の情報を得る機会がありましたので、皆さんがご関心のある助成制度や実績数などについて整理しましたので報告します。
昨年9月に一般社団法人公共建築協会から「雨水利用・排水再利用設備計画基準・同解説 平成28年版」(写真1)が発行されました。本書は平成16年に発行された「排水再利用・雨水利用システム計画基準・同解説 平成16年版」が12年ぶりに改訂されたものです。この間に「雨水の利用の推進に関する法律」(平成26年法律第17号)が制定され、平成28年版では雨水利用設備に関する計画基準が大幅に加筆され、充実した内容になりました。東北文化学園大学名誉教授の岡田誠之先生(計画基準・同解説の作成の委員長)と委員で参加した私とで、本計画基準の内容を主要都市で講演する機会があり、その際に地方自治体の雨水利用の現状に関してヒアリングしてきました。このヒアリング内容と関係学会の委員会で得た情報などを追加して、表1の雨水利用に関する地方自治体の情報に整理しました。
表1では、前述の計画基準で雨水貯留槽容量の計画線図を作成した10自治体と新たに情報を得た横浜市における雨水利用に関して、担当部署、条例・技術指針等、助成制度、実績数を簡潔にまとめました。担当部署では、雨水の流出抑制の観点から下水道分野が担当している地方自治体が多いです。これらの部署では、雨水の流出抑制の施策として、雨水貯留タンクの設置と浸透施設を対にして、技術基準や指針を制定し、助成制度を創設しています。そのため実績数でも雨水貯留タンクと浸透施設が並列して記載されていました。記載した地方自治体以外の自治体でも、担当部署や技術基準・指針、助成制度の扱いや内容はほとんど同じと考えられます。都市計画部局や環境部局で雨水利用を扱っているのは、少数の地方自治体のみです。
雨水貯留タンクや浸透施設の実績数は、地方自治体の地域特性や降雨環境によって大きく異なっています。新潟市などの様に浸透施設が圧倒的に多い地域もあれば、高松市や福岡市の様に雨水貯留タンクが圧倒的に多い地域もあります。また、高松市はし尿浄化槽を雨水タンクに転用した施設数が多い地域であります。これらの実績数は、地方自治体の助成制度に基づいて、申請された数値から回答頂いた実績数ですので、助成制度を利用されなかった場合には、この実績数に入っていません。雨水貯留タンクの実績数は、100ℓレベルの小型のタンクから地方自治体の庁舎に設置する大型の貯留タンクまで様々ですが、全国各地で雨水利用がそれなりに行われていることが分かりました。
沖縄県では「りっか!雨水利用≪雨水利用のすすめ≫」の小冊子(写真2)を平成25年に作成して、雨水利用の有効性を県民の皆さんに知ってもらえる様に努めております。「りっか」とは、沖縄の方言で「さあ」という意味だそうです。本小冊子には、沖縄だけでなく全国の雨水利用の事例なども紹介されており、写真や図が多く読み易いものです。ご関心のある方は、ホームページに紹介されていますのでご覧ください。