2015.09.15
雨水浸透と雨水利用の両刀使いの竪雨樋
安藤勝治(理事・発明家)
雨水活用研究・活動発表会は、雨と親しみ、雨を楽しみ、雨水と暮らしていく中で活かしていく研究や活動等を発表し、会員同士の交流を深め、雨水活用に関する最新の情報を共有するために開催しています。2015年7月26日に雨水市民の会総会と同時に開催された発表会では3つの発表があり、その内容をご紹介します。 なお、今回の安藤勝治さんの記事は発表会の内容に一部編集を加えております。(Webあまみず編集部)
はじめに
雨水浸透は地下水や湧水を保全し、豪雨時の下水道の負担軽減するために大変重要な対策です。一方、雨水利用も一時的に貯留し、資源の有効利用や災害時の生活用水に使えるなどの役割があります。自治体によって双方に助成金制度が整っているところもあります。(図1) しかし、雨水浸透は一般住宅では割高感があり、しかも目に見える効果がないので、なかなか普及が進んでいません。一方、雨水利用はタンクに雨を溜めて散水などに使うことにより目に見えて設置者にとっては分かりやすいグッズです。 雨を浸透と雨水利用に上手く振り分ける方法があれば、もっと雨水活用が普及するのではないか。その「両刀使いの竪雨樋」を考えてみました。
竪雨樋に組み入れる
竪雨樋を上は高さ1.6m、下は0.6mで接断し、この1mの空間に組み入れます。切断した雨樋をさらに35㎝に切り、これを利用して装置を作っていきます。
ソケット部分にフィルター
上部はソケット75-60(樋の直径60㎜の場合)にフィルター(写真1)を付けます。このフィルターは、金属製の茶こしをさかさまにしたものですが、ゴミを中に入れないようにするためのものです。フィルターは、乾いているときに取り出し、たたくだけで簡単にゴミを取り除けます。フィルターは高さが1.5m位の位置にあるので、ゴミがたまっているかどうかの目視確認がしやすいです。
水圧上昇管
35cmの雨樋の下はキャップで留めます。その中に水圧上昇管(図2)を差し込みます。水圧上昇管はサイフォン現象により、A部分まで水位が来ると、水圧がかかって下部に排水しまが、B部分まで排水されると止まります。雨水が竪樋にどんどん入ってくると、これを繰り返すことになります。すなわちパルス排水となります。
コックレバーの調節により利用と浸透に振り分ける
キャップの下は直径13㎜の止水コック付き排水管につなげます。 止水コックレバーを水平にすると、雨水利用の配管へ流れます(写真2)。これを雨水タンクにつなげて雨水をためることができます。 レバーをすいへい垂直にすると、浸透ますに雨水が流下します(写真3)。従来、竪雨樋にはフィルターがないため、浸透ますが目詰まりして浸透率の低下が懸念されます。しかし、このフィルター付き装置を使えば目詰まりが防げます。 レバーを45度にすると、雨水は分流され、雨水利用と浸透ますに流下します(写真4)。
浸透ますに流下する量
竪雨樋の直径が60㎜の場合は浸透ますへの配管の直径は13㎜となりますが、1時間あたり最大900ℓ流下が可能です。竪雨樋の直径が100㎜では浸透桝への配管の直径は20㎜で、1時間当たり2000ℓの排水が可能です。管の径が細くても排水を多く出すことが可能です。
水圧を利用して「雨樋」発電をしてみました
直径が100㎜の水圧上昇管付き竪雨樋では、水圧を利用して発電が可能です。発電自転車のダイナモを利用して、水受けは塩ビ管継手(直径50㎜)チーズ5個を使用。水圧が高いので、水車の回転が速いです。ダイオードの発光の明るさが確認できました。(写真5)
水圧上昇管付き竪雨樋のメリット
この装置の全体の構成は写真6のようなものです。普段は雨が少ない時は雨水利用、少し強い雨の時は雨水利用と浸透ますの両方に、大雨の時期には浸透ますにのみ流下するようにセットできます。ときどき浸透ますの目詰まり防止のために、雨水タンクへ流して休ませることもできます。