文化

自然を奏でる楽器  ~雨が降るまで~

笠井玉喜(東京都立港特別支援学校教諭)

忙しい生活を送っていても私たちの耳に何気に入ってくる自然の音。皆さんはどんな音を思い出せますか?

映像だけでは物足りないドラマのシーンでは雨が降る音や風の音が入ることで、観ている人も主人公の気持ちにより近づける効果があります。生活に密着している音だからこそ、昔の人は自然災害に困った時に自然の音を楽器にして、音を聴いて心を落ち着かせ、願いを込めて祈ったのではないでしょうか。

雨にちなんだ楽器の一部を紹介しましょう。雨が降る前と言えば・・・カエルが鳴き出し、風がふいて、木々が揺れて雷が鳴りだす。そしてぽつぽつ雨が降り出してくる。今回は、こんな自然の音を作り出してくれる楽器を取り上げてみてました。

(左)写真1 モーコック  (右)写真2 ハーモニックパイプ

(左)写真1 モーコック 
(右)写真2 ハーモニックパイプ

カエルの鳴き声『モーコック』(写真1)

背中の凹凸をギロのように附属の棒で軽くなでると、本当にカエルがケロケロ鳴いているような音がします。叩いても木魚のようによい音がします。音も姿も愛嬌のあるベトナムの木製楽器です。

風の音『ハーモニックパイプ』(写真2)

振りまわすと「ヒョ~~~」という音が鳴ります。回す速度を早く回せば高い音で、数段階の速さで音色を自分で作り出せます。たかがパイプと思いきや、ちゃんとした日本製の楽器。この楽器を使った曲もあります。

写真3 木々が揺れる音がするチャフチャス

写真3 木々が揺れる音がするチャフチャス

木々が揺れる音『チャフチャス』(写真3)

マイチルという木の実をつないだシェイカーです。木の実がぶつかりあって「ジャッ、ジャッ」という音が鳴ります。アンデス音楽のリズム楽器として使用されています。

嵐の音『スプリングドラム』(写真4)
写真4 嵐のときの風の音がするスプリングドラム

写真4 嵐のときの風の音がするスプリングドラム

太鼓の打面から伸びるバネを揺さぶると筒に反響して、風や嵐のような音が鳴ります。筒が大き

いと低い音で恐ろしさを増し、筒が小さいものは「コーッ」と風のような音が鳴ります。インドネシアやアメリカ等で製作されています。しかし、この楽器は、意外にも簡単に製作できる楽器であるようです。

雨の音『レインステック』(写真5)
写真5 雨の降る音がするレインスティック

写真5 雨の降る音がするレインスティック

名前の通り、雨の音を聴かせてくれる楽器です。由来は、雨が少ない乾燥地帯で枯れていたサボテンを拾い上げた時に雨のような音が聞こえたということで、雨の棒「レインステック」という楽器ができたそうです。古来、アフリカの多くの部族が雨乞いをするために使用していたとも言われており、中南米に伝わりインディオ達も雨乞いで使ったそうです。現在でもチリのアンデスの麓のアタカマ砂漠では、雨乞いの儀式にレインスティックが使われています。この楽器も自分で製作できる楽器の一つです。

相愛高等学校音楽科卒業、相愛大学音楽学部器楽学科弦専攻卒業。現在は、東京都立港特別支援学校音楽の教諭。休日は、老人ホームや障害者支援のための演奏等を行い日本全国をまわっている。
専門はヴァイオリンで、琴や三線、ウクレレ、和太鼓なども演奏に取り入れている。また、効果音を付けたミュージック紙芝居も取り入れている。

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