文化

感じる雨・楽しむ雨・育む雨 ~雨の詩集、雨の絵本

松本 真理子(会員・イラストレーター)
南 昌子(雨の絵本ひろば担当理事)

雨水活用研究・活動発表会は、雨と親しみ、雨を楽しみ、雨水と暮らしていく中で活かしていく研究や活動等を発表し、会員同士の交流を深め、雨水活用に関する最新の情報を共有するために開催しています。2015年7月26日に雨水市民の会総会と同時に開催された発表会では3つの発表があり、その内容をご紹介します。(Webあまみず編集部)

雨の詩集

p15雨の詩集表紙

「雨の詩集」 特定非営利活動法人雨水市民の会、2011年7月15日発行。頒価500円

雨と文芸チームは2003年に発足し、各テーマごとに冊子を発行してきました。その第5号が『雨の詩集』です。私は専らイラストでの参加で、『雨の詩集』への参加も、資料集めがほぼ終了した2010年秋でした。 第1〜4号までの『雨と文芸』は16ページ程の読み物でした。第5号も同様の体裁になる予定だったはずですが、集めた詩があまりにもバラエティーに富み、何れも捨てがたい作品が多く、より良いものにしたいという欲も出てきて、遂には88ページにも及ぶ「大作」となってしまいました。その分、編集作業は苦しいものになるのは目に見えていたにもかかわらず、茨の道を選んだのは、そうせずにおかない詩の力をメンバー達が感じ取っていたからかもしれません。 とにかく膨大な資料は読むだけでも大変で、読み合わせ、校正は苦行のようで皆ヘトヘトです。コラムとプロフィールにもかなり力を入れました。プロフィールも単に年表的な記述では意味が無い。どの様な詩人なのか、どの様な詩であるのかにもできる限り迫り、コラムに次ぐオリジナルな文章として成り立たせることを目指しました。 各々の詩の素晴らしさは読んで頂けばわかることと思いますが、編集作業への真摯な取組みと情熱が、この『雨の詩集』そのものを優れた作品に育てたと私は思っています。 是非、『雨の詩集』で詩の世界を味わい、詩人の人生や創作の秘密にも触れて頂きたいと思います。 ここでは次の3編の詩をご紹介します。

まどは、山川草木すべてにいのちがあり人間はその中の一匹に過ぎないこと、身のまわりのものすべてが広大な宇宙や天、言いかえれば生命の根源とつながっていることを詠い続けている。(『雨の詩集』まど・みちおプロフィールより)

まどは、山川草木すべてにいのちがあり人間はその中の一匹に過ぎないこと、身のまわりのものすべてが広大な宇宙や天、言いかえれば生命の根源とつながっていることを詠い続けている。(『雨の詩集』まど・みちおプロフィールより)

 

掲載詩は、戦後、山形県に疎開していた家族を迎えに行った時に作られたもので、蕭々とは広辞苑によれば「風雨・落葉などの音のものさびしいさま」。詩にも戦後の虚脱感のようなものが感じられる。(『雨の詩集』村野四郎プロフィールより)

掲載詩は、戦後、山形県に疎開していた家族を迎えに行った時に作られたもので、蕭々とは広辞苑によれば「風雨・落葉などの音のものさびしいさま」。詩にも戦後の虚脱感のようなものが感じられる。(『雨の詩集』村野四郎プロフィールより)

 

都立豊多摩高校時代には不登校から、学力が低下、夜間部に転学してやっと卒業した。その後の進路を尋ねる父に、書きためた二冊の詩のノートを差し出した。父は、その詩篇を読み進むうち、興奮し、即刻、友人の三好達治にノートを送った。予想通り翌日、三好が駆け付け、まもなく、詩集『二十億光年の孤独』が東京創元社から出版された。宇宙における、人間という種の孤独を瑞々しく表現した、といわれる。まったく新しい詩と詩人誕生のドラマだ。(『雨の詩集』谷川俊太郎プロフィールより)

都立豊多摩高校時代には不登校から、学力が低下、夜間部に転学してやっと卒業した。その後の進路を尋ねる父に、書きためた二冊の詩のノートを差し出した。父は、その詩篇を読み進むうち、興奮し、即刻、友人の三好達治にノートを送った。予想通り翌日、三好が駆け付け、まもなく、詩集『二十億光年の孤独』が東京創元社から出版された。宇宙における、人間という種の孤独を瑞々しく表現した、といわれる。まったく新しい詩と詩人誕生のドラマだ。(『雨の詩集』谷川俊太郎プロフィールより)

雨の絵本

現在、雨の絵本ひろばには、約850冊の絵本があります。この絵本ひろばの特徴は、雨をテーマに本を集めていることです。ひとくちに、雨といってもいろいろありますが、ひとつは、雨のお話絵本です。「あめ」のほか、「くも」「ゆき」「かみなり」「かえる」「かさ」「長ぐつ」などが話の中に出てくるもので、全部で180冊ほどあります。

もうひとつは、「いのち育む雨」の視点から自然科学系の絵本が250冊ほどあります。自然科学系の絵本には、写真絵本が数多くあります。図鑑的要素が強い本が多いのですが、中には、作者の自然に対する思いが伝わってくるような写真絵本があります。今回はその中から、いくつかの写真絵本をご紹介し、星野道夫の「クマよ」の読み聞かせをしました。

『10パンダ』 作:岩合日出子 写真:岩合光昭 出版社:福音館書店 『クモのいと』 作:新開 孝 出版社:ポプラ社 『アリからみると』 作:桑原隆一 写真:栗林 慧 出版社:福音館書店

『10パンダ』 作:岩合日出子 写真:岩合光昭 出版社:福音館書店 『クモのいと』 作:新開 孝 出版社:ポプラ社 『アリからみると』 作:桑原隆一 写真:栗林 慧 出版社:福音館書店

『10パンダ』世界猫歩きでおなじみの岩合光昭の愉快な絵本。1パンダから10パンダまで、一頭ずつパンダが増えていきます。ページをめくるたびにカワイイと言ったり、大笑いしたりしてしまいます。

『クモのいと』雨上がりのクモの巣の美しさ、獲物を捕まえた時の迫力ある写真。クモの苦手な人も思わず見入ってしまいます。

『アリからみると』医療用の内視鏡を改造し、自作したカメラで撮った写真は、虫の目から見た世界を表現していると言われています。トノサマバッタのド迫力にはびっくりです。

『クマよ』 文・写真:星野道夫 写真構成・レイアウト:なかのまさたか 出版社:福音館書店

『クマよ』 文・写真:星野道夫 写真構成・レイアウト:なかのまさたか 出版社:福音館書店

『クマよ』”北の自然”にあこがれを抱いていた星野道夫は、学生時代に6つのエスキモーの村の村長に手紙を送ります。その一つ、シシュマレフ村から返事が届き、エスキモーの家族とひと夏を過ごします。慶應義塾大学を卒業後、アラスカ大学に留学、以降、撮影活動を始め、アラスカの動物・自然・人々を撮り続け、数々の作品を発表しました。しかし、1996年、カムチャッカ半島でヒグマの事故により、43歳で急逝。

この『クマよ』は、1998年、星野道夫の遺稿と使用写真についてのメモをもとに編集されました。

雄大なアラスカの自然の中で、クマと共に生活しながら撮影された写真を見ながら、そこに書かれた詩を読んでいると、星野道夫のアラスカの自然やクマに対する思いがひしひしと伝わってきます。

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