学術

長崎県五島列島赤島活性化プロジェクト報告2017

笠井利浩(理事・福井工業大学環境情報学部教授)、近藤 昌(会員・福井工業大学環境情報学部講師)

図1 五島列島赤島の位置

図1 五島列島赤島の位置

赤島は、五島列島の福江島から船で25分ほどの島(図1)で、東京ディズニーランドとほぼ同じ面積です。約15名の島民が暮らし、電気は海底ケーブルで繋がっていますが、未だ全ての生活用水を雨水に頼る生活が営まれており(写真1)、慢性的な水不足に悩まされています。このような背景の下、昨年度から始まった赤島活性化プロジェクトでは、赤島に雨水を水源とした小規模給水システムの開発・設置を行っています。また、雨水で生活する島特有のライフスタイルを活かした持続可能な活性化法を模索・実践する計画が進行しており、今回は2017年度の活動報告をさせていただきます。

写真1 赤島内の住宅に設置されている雨水タンク(約6㎥)

写真1 赤島内の住宅に設置されている雨水タンク(約6㎥)

昨年の夏には、以下の活動をしました。

●給水システムの開発・設置雨の集水面「雨畑」設置

1.「雨畑」から集落間の送水管設置

2.島内の貯留雨水の水質評価

3.島内における水使用量調査

●離島振興観光資源開拓

4.赤島高精度マップ製作

5.五島列島赤島の風景を世界へ〜グーグル・ストリートビューによる360°パノラマ写真の公開〜

写真2 赤島雨水活用給水システムの島内配置イメージ

写真2 赤島雨水活用給水システムの島内配置イメージ

6.赤島プロジェクトの広報

手作業で雨畑と送水管を設置

集落に近い場所で雨を集めて貯め、送水できる場所を選定しましたが、そこに設備を設置するため所有者の同意が必要になりました。しかし、土地の境界線も定かでなく所有者を探すことが困難でした。そこでドローンによる高精度マップを製作し、公図と重ね合わせることでようやく所有者を見つけることができました。

車がない島では重機も使えず、資材などの運搬はリヤカーで、暑い盛りに藪を刈り取り、人力で穴を掘り、コンクリートを手作業で捏ね、他等々、ハードな作業でした。

ようやく設置した雨畑は、台風にも耐え、かなりしっかりしたものとなりました。2018年度ではタンクを設置します。

図2 全体のイメージ図・赤丸部分は2017年度に設置した雨水集水面「雨畑」約100㎡

図2 全体のイメージ図(赤丸部分は2017年度に設置した雨水集水面「雨畑」約100㎡)

 

写真3 完成した雨畑

写真3 完成した雨畑

島内の水使用量調査と貯留雨水の水質評価

図3 水質検査結果(長崎県衛生協会へ依頼)

図3 水質検査結果(長崎県衛生協会へ依頼)

島民の協力のもとに、水使用量の調査を行ったところ、一人当たり1日62ℓでした。これは国内の平均使用量219ℓに対して3割弱でした。島は、水洗トイレはなく、風呂も毎日は使わない生活です。限られた雨水のみの生活ですので、徹底した節水の暮らしです。

水質調査も実施しました。自然水ですから細菌等の水質基準には合致しない場合がありますが、比較的きれいな水でした。私たちが宿泊していた公民館は、普段水を使わないので、あまり良い水とは言えませんでしたが、誰もお腹を壊したりしませんでした。

赤島プロジェクトの広報戦略

図4 「雨水生活体験」のポスター。赤島で雨水生活を体験するために小学生を募集した。

図4 「雨水生活体験」のポスター。赤島で雨水生活を体験するために小学生を募集した。

赤島が雨水でこれからも暮らせるために、私たちは様々な広報戦略を実施しています。

Facebookしまあめラボ

しまあめラボPR用HP

YouTube しまあめラボChannel

●東京ドキュメンタリー映画祭2018出品「しまあめラボ〜五島列島赤島が、雨で暮らせるために」

●小学生を対象に雨水生活体験プログラム実施(2018年3月)

 

 

 

 

参考:Webあまみず 関連記事

「五島列島赤島活性化プロジェクト〜雨まちづくりで目指す持続可能な開発離島対策」 レポーター:笠井利浩・近藤 晶(会員・福井工業大学) 2017/08/30掲載

「雨タスサロン⑧雨+離島(2017.9.21)〜雨まちづくりで目指す持続可能な離島振興:笠井利浩さん(福井工業大学)のお話」 WEbあまみず編集部

この記事は、平成30年度雨水市民の会研究・活動発表会(2018年7月21日)で発表報告されたものを編集し直しました。

福井工業大学 笠井 利浩(かさい・としひろ)
1968年京都府生まれ、福井工業大学環境情報学部環境・食品科学科教授、日本建築学会雨水活用推進小委員会主査、日本雨水資源化システム学会広 報委員 長・理事、あめゆきCafe事務局長、NPO法人雨水市民の会理事、NPO法人あめまちサポート理事を務める。自ら始めた稲作を通じて雨水に目覚め、雨水 活用の技術開発から雨を活かした環境教育まで幅広く活動している。

福井工業大学デザイン学科 近藤晶(こんどうしょう)
京都工芸繊維大学在学中に友人とデザインチームを結成し、音楽イベント等への映像提供やWebサイトデザインなどを行う。卒業後アイコム株式会社 宣伝広告室にて海外向けカタログや展示会向けポスターのデザインや、国内展示会用説明動画などを制作。2009年より福井工業大学デザイン学科で グラフィックデザインやWebデザインを教えながら、デザインやアート作品を制作している。

«