ひと・市民

雨水活用の水耕栽培

安藤 勝治(理事・安藤電気製作所)

家庭菜園は自分で育てた野菜が新鮮で美味しく食べられ、あちこちで盛んにされています。畑や庭などがないと、ベランダのプランターなどで栽培する人もいます。

プランターでの栽培では、土で栽培することが多いのですが、同じ土を使うと連作障害が2年目から出始めます。野菜の種類を変えたり接ぎ木苗により改善は可能ですが、3年目から検討が必要です。新しい土を使うことも良いのですが、古い土の処分に困ります。野菜からの蒸散に加え、土壌からも水が蒸発するので、実際は水やりは余分な量を散水しています。実の収穫時期には、1日留守ができないほど水やり回数が多くなります。私は、電気を使わない自動潅水装置の開発も行っていましたが、プランターを3セット以上並べて栽培する必要があり、規模や価格面で個人での購入は無理がありました。

もつと価格が安く、プランター1セットで対応できる水やり設備がないかをいろいろ検討していました。そして、プランター容器に土ではなく水耕栽培として、野菜の種類の入れ替えも可能、養液はペットボトル2ℓを2本を使用する方法を開発しました。他社の水耕栽培装置は、養液に空気を入れるのと水を回転させるため、電気が必要です。しかし、家庭のベランダにはコンセントが無く、室内からの電源により、窓を少し開けてコードを這わせなくてはならないことにもなります。電気が不要な水耕栽培はできないか?

これが開発の原点となりました。小型の3ℓ容器を改造して、根が水の中に入る割合を調整し、培地に水苔を利用することで、酸素を根に与えることができました。

畑と比べても収穫量が多く、狭いベランダでも栽培でき、セット全体が移動可能で室内栽培も可能です。水やりはペットボトルに養液を入れて差し込んでおくだけ、留守時の水やりも消費する水の量が把握できれば対応できます。このような水耕栽培キットが「すいこーくん」です。

蒸散作用は、野菜の種類、天気や育つ過程、葉の枚数などでも違いがあります。特にナスは、葉の面積が大きく、水の消費量が多くなります。「すいこーくん」では、1本の野菜による蒸散作用を計測することが可能です。ですから、学校の教材や自由研究にも使えます。個人で栽培してても、水の消費量の観察ができるので、水の管理が楽になります。また、この度「植物の蒸散作用計測装置」として特許を取ることができました(PAT6340573号/2018.5.25)。

① 水耕栽培の受け容器:2ℓ受け容器(ペットボトル2ℓ・2本受け入れ口付き) ②栽培容器:小型プランター(培地として水苔を入れる) ③受け容器に小型プランターを入れる

① 水耕栽培の受け容器:2ℓ受け容器(ペットボトル2ℓ・2本受け入れ口付き)
②栽培容器:小型プランター(培地として水苔を入れる)
③受け容器に小型プランターを入れる

④小型プランター上部にフタを乗せる ⑤目盛板付きペットボトル2本を差し込む ⑥支持台に受け容器を乗せる

④小型プランター上部にフタを乗せる
⑤目盛板付きペットボトル2本を差し込む
⑥支持台に受け容器を乗せる

⑦ ペットボトルとフタを乗せ、組立て完成 ⑧分解したユニットの構成

⑦ ペットボトルとフタを乗せ、組立て完成
⑧分解したユニットの構成

⑨支持台と受け容器を横から見る ⑩1段式では、丈が低いナス、ピーマン等の栽培 11 2段式では、丈が高いトマト、キュウリなどの栽培

⑨支持台と受け容器を横から見る
⑩1段式では、丈が低いナス、ピーマン等の栽培
11 2段式では、丈が高いトマト、キュウリなどの栽培

12 外の風が強くナスを室内栽培。撮影日までに6本収穫(2018年6月10日撮影) 13 トマト大玉(左)は実が16個、ミニトマト(右)は6段目120個程度(2018年6月12日撮影)

12 外の風が強くナスを室内栽培。撮影日までに6本収穫(2018年6月10日撮影)
13 トマト大玉(左)は実が16個、ミニトマト(右)は6段目120個程度(2018年6月12日撮影)

14 ミニトマトの上段では花が1段で20個程度つく(2018年6月12日撮影) 15 1本の苗から多数の実がつく(2018年6月29日撮影)

14 ミニトマトの上段では花が1段で20個程度つく(2018年6月12日撮影)
15 1本の苗から多数の実がつく(2018年6月29日撮影)

 

この記事は、平成30年度雨水市民の会研究・活動発表会(2018年7月21日)で発表報告されたものを編集し直しました。

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