2018.04.24
辰濃文庫を始めます 〜佐藤 清さん
佐藤 清(雨水市民の会 会員・「エコビレッジ東松山」主宰・テクノプラン建築事務所)
「エコビレッジ東松山」(埼玉県東松山市古凍(ふるごおり)451-1)内に辰濃和男さんが所有していた図書約1万冊を活用してもらえるように、古い蔵を改修し、開館に向け準備中です*。
辰濃さんの本を所有しているいきさつを先にします。
辰濃さんは東京の小金井市内に住居を構え、「天声人語」等を執筆するための資料や膨大な書物が家中に山積みになっていました。多分2万冊ぐらいあったのではないかと思います。殆どが2階にありました。そこで玄関の扉の閉まりが悪くなったり、本を置く場所をたくさん作るなどの理由から、相談を受け、家の修理を15年ぐらい前から手がけるようになりました。
書棚は3回作り直しました。最後に玄関部分の吹き抜け部分も改修して、4畳半の書架室に替えました。他に階段部分も書棚を作り、家中至る所が沢山の本でかなり重くなって、新しい柱を2本入れ、建物の補強を行ってきました。
そんな矢先、昨年(2017年)12月に訃報を聞き、村瀬誠さん、人見達雄さん、私の3名で、とりあえずご自宅に参上しました。
奥様からは、自宅の売却が決まっていて1か月以内に片付けをしなければならないこと、そのために膨大な本や資料を処分しなければならないことをお聞きしました。私は辰濃さんの書かれた本、読まれた本、また社会的に重要な本などに興味があり、これらを引き取り、辰濃文庫を開設したいと奥様に申し出をしました。
2トントラックで2日かけ、男手2人で積み込み、エコビレッジ東松山に運びました。この時、長男の辰濃哲郎さんが本の仕分けや運び出しに参加してくださり、大変助かりました。哲郎さんのフットワークとパワーは学生野球での活躍を彷彿とさせてくれました。古い蔵の中に書架を作りながら、この原稿を書いている現在(2018年4月16日)、作業は半分くらいまで進みました。
5月中にはなんとかオープンしたいと思っています。
書かれた本、読んでいた本のジャンルがあまりに多岐に渡り、ただただ驚きの連続です。
ジャンルを決めないと分類収納に困るので、片付けながら感じたままに分類をすることにしました。
①日本語を大切にする・・・ことばと表現
②平和・・・沖縄をライフワークにしていた
③緑と環境・・・緑に関する本が多い
④歩くこと・・・お遍路、平和とのつながり
⑤海外との接点・・・ニュージーランド、オーストラリア、ブータン
⑥天声人語
片付けながら、拾い読みをしていると、辰濃さんの姿が少し見えてきました。
多くの書かれた文章には、妥協しない強い姿勢と使命、そしてそれを裏付ける奥の深さを感じました。その行間には動き廻っている人たち、人の情熱、真実を掘り下げる力などを平易な文章で書き上げる連続であったことが分かってきました。
当所、エコビレッジ東松山に「辰濃文庫」を開く必然性に少し悩みました。しかし、取り越し苦労であったことが分かりました。
天声人語の1985年7月21日付コラムは、オランダのナイメーヘンで毎年行われる「フォーデーズ・マーチ(4days march)」の一文があります。4日間歩く平和運動としての話です。締めくくりは『楽しみながら歩けば、風の色がみえてくる。』
東松山市では、40年前から日本スリーデイマーチ運動を行っています。世界各国、もちろんオランダからの参加者もいます。この天声人語の「楽しめば〜」の文は、東松山市役所の正面入口に碑文として建てられていました。さらに、東松山駅(東武東上線)の東口にもロータリークラブが同じ「楽しみながら〜」の文を銅像と一緒に建てていました。
*詳細は、Webあまみず「人と自然の技術の調和を目指す”エコビレッジ東松山”」に掲載。