2013.10.17
庭にとけこむ雨水活用~植木鉢サブタンクに込められた工夫
谷口 淳一(あまみず編集委員)
今回は、本業の、自然素材を活かした公園遊具などの設計・施工での経験をふまえながら自宅で雨水活用を実践されている麓 雄二(ふもと ゆうじ)さんの取り組みをご紹介します。
8月半ば、ちょうどお盆休みの頃にお話を伺ってきたのですが、「きっと雨水タンクが目印になるだろう。行けばわかるさ!」とたかをくくって、ご自宅の場所を詳しく聞かずに出かけたのです。
ところが、住所を頼りに歩けども雨水タンクを見つけることができず、ついに携帯からSOSの電話を入れることに。
途中まで迎えに出て頂いただいた麓さんにご自宅に案内されて、タンクを発見できなかった理由がわかりました。
落ち着いた和風の建物と生け垣の間に設置された雨水タンクは、雰囲気を壊すことのないよう全て落ち着いた茶色に全塗装されて建物の一部としてとけこんでおり、さらに、タンクからの雨水は、庭先にさりげなく置かれた陶器の植木鉢サブタンクに導かれ、まるで日本庭園に置かれた手水鉢のよう。一見、雨水活用をしているようには見えないのです。
「そこの柄杓(ひしゃく)でちょっと水を撒いてみてください」と言われるままに、植木鉢サブタンクになみなみと満たされた雨水を何度か掬ってあたりの植物に水やりをしてみると、あら不思議。下がった水面は次第にもとに戻り、しかも溢れてしまうことはない…。
谷口:「雨水タンクの蛇口からジョウロに水を移すのって中途半端に時間がかかって意外と面倒なんですよね。この、柄杓で雨水を掬ってどんどん水まきができるのって、とてもいいアイデアだと思います。それにしても、メインタンクの水面の方がうんと上にあるのに、どうして植木鉢サブタンクの縁のところで給水が止まるのですか?」
麓:「実は、メインの雨水タンクから植木鉢サブタンクに給水する途中に給水調整タンクを置いて、そこにボールタップが仕込んであるのです。調整タンクの水面と植木鉢サブタンクの水面が同じになるように調整用タンクの高さを調節してあるんですよ。」
なるほど、ボールタップを活用するとはグッドアイデア。しかも、ボールタップが仕込んである調整タンクもメインの雨水タンクと同じ落ち着いた茶色に塗ってあり、さらに、雨樋から取水するパーツも同色でコーディネイトという凝りよう。
水まきに使う柄杓も、近くのホームセンターなどにあるものだと一掬いの水量が足りないため、はるばる浅草の合羽橋まで出向いて探してきたとのこと。
麓さんのご自宅には、同じシステムが玄関先と二階のバルコニーにも設置してあり、現在では屋根面積の半分以上から集水していて、さらにバルコニーの太陽光パネルで発電した電気で風呂水ポンプを回して、メインの雨水タンクから直接水まきをすることもあるそうです。
ちなみに、メインの雨水タンクは、インターネットオークションなどで容量150Lほどのリユース容器を入手して加工。植木鉢サブタンクは、鉢底の穴にL字の管をセットして(下の写真参照)ホースで接続してあるため、メインタンクから給水されるときには、水底からわき水が出ている時のように水面が揺れるのもさりげない演出として興味をひかれました。
表面からの蒸散で水温がわずかながら下がるので素焼きの植木鉢を使うのもメリットがあること、鉢底穴が歪んでいて接続部から水が漏れてしまうときには新たに穴を開け直すこともあるなど、非常に研究熱心かつ丁寧な仕事をされる麓さん。植木鉢サブタンクを使わないときにはふたをしてボウフラ対策も万全。
雨水市民の会の会員でもある麓さん。これからも、さりげない雨水利用を目指して工夫を重ねていきたいとのことでしたので、改めてお話を伺ってみたいと思っています。