ひと・市民

実践レポート防災まちづくりのシンボル路地尊・天水尊、生みの親東京・墨田区 徳永 暢男さん

高橋朝子

徳永さん製作の天水尊

個人宅への設置を意図して開発された雨水タンク「天水尊」(現在は製造されていない)

雨水市民の会の前会長、徳永暢男さん、通称「徳さん」は、生まれも育ちも東京の下町、墨田区。今でこそ東京スカイツリーの完成で湧くが、以前から墨田区は雨水活用の先進地として知られている。環境や防災におけるこの地域ブランドを産み出してきたキーマンのひとりが、この徳さんだ。プラスチック加工職人の技を活かし、「路地尊」と「天水尊」の開発や設置に携わり、雨水活用の先駆け・墨田の顔として信望も厚い。技を活かし、「路地尊」と「天水尊」の開発や設置に携わり、雨水活用の先駆け・墨田の顔として信望も厚い。さんは、1985 年ころから防災まちづくりの住民活動、「一寺言問を防災のまちにする会*2(通称「一言 ( ひとこと ) 会」)  」に参加し、「路地尊」を生み出した。民家の屋根に降った雨を地下のタンクに溜め、手押しポンプで汲み上げる装置で、区内に 21 基ある。初めて雨水活用をした路地尊は、江戸時代の火事消火のための天水桶をモチーフに、下町になじむレトロなデザインも取り入れた。溜めた水はリサイクル・ストックヤードのビン・缶の洗浄に、農園の水遣りにと、日常的に使われて、まちのコミュニティに役立てられている。路地尊の命名は、路地の安全を守るシンボルとなるようにという願いからである。

また徳さんは、個人の家にも雨水活用を広めたいと「天水尊」を開発した。養魚場で使われるポリエチレン製のブイを利用した 200ℓのオリジナル雨水タンクだ。雨を「天水」として尊ぶという徳さんらしいネーミングだが、日本における「個人用」の雨水タンクの始まりなのだという。徳さんは、市民にとって使いやすく低価格で手に入る雨水タンクを多くの事業者が作れば、もっと広がると思った。1994 年に墨田区で開催された雨水利用東京国際会議を契機に雨水利用事業者の会を仲間と立ち上げ、事業者の育成に一役買った。こうした取組みがあって、今では墨田区は、全国に先駆けた雨水活用先進地となっている。墨田区の助成による雨水タンク普及は、区の把握では 289 基(平成 24 年 3 月時点)。徳さんを始め、多くの区民に、雨水活用の意義や必要性が浸透し、活発な活動がされている。

あまみず編集委員 広報委員長

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