ひと・市民

被災したまちの再生に雨水活用の支援 宮城・東松島市

日本建築学会雨水建築普及小委員会 屋井裕幸(雨水貯留浸透技術協会 技術第二部長)

自然エネルギーでまちの再生を

壊滅的な被害を受けた宮城県東松島市野蒜地区では、地域コミュニティの再生に向け、NGO*6 の支援を受けて太陽光発電装置(20 世帯)や太陽熱温水器(2 世帯)を住民自らの手で設置していました。
私たち日本建築学会雨水建築普及小委員会はこの話を聞き、地区リーダーの坂本雅信さん等に雨水タンクの設置を提案し、結果、地区内 20 世帯の賛同を得て、実施が決まりました。2011 年 8 月 12 日、有志 4 名が竪樋の形状や設置場所についての現地調査を行い、9 月 11 日、地元の方の協力を得ながらの設置を行いました。

自然エネルギーでまちの再生を

自然エネルギーでまちの再生を

断水の経験から雨水活用を

野蒜地区は、東松島市の南西部、奥松島の近くに位置します。海岸に近い低地の住宅は、津波で全壊。
仙石線から山側においては、全壊もしくは 1 階部分が流失した家屋や、また大きな損壊を免れても 1階部分が津波により浸水した住宅も多数ありました。仙石線の線路や野蒜駅も被害を受け、復旧のめどが未だ立っていません。被災後、かろうじて家が残った野蒜駅周辺の住民たちは、坂本雅信さんの家を活動拠点(新町区野蒜駅裏本部)に、“ 生かされた命を大切に、お互い助け合い、共にガンバロー” の合言葉で、コミュニティの再生に取り組んできました。
電気は 2 ~ 3 週間で復旧しましたが、水道が使えるようになったのは 4 月下旬。トイレを流すことも容易でなく、生活用水の確保のため、給水ポイントまで車で往復 1 時間以上かけての “ 水汲み” が日課。そうした日々が 1 ヶ月半の長きに亘ったそうです。

皆で雨水タンクの取り付け

皆で雨水タンクの取り付け

皆で雨水タンクの取り付け

タンク 22 基(100 ~ 220ℓ)と取水装置等の付属品は、(雨水活用建築製品便覧(p15 参照)の掲載企業の)タンクメーカー 7 社から無償で提供して頂きました。樋から取水する器具と各家の縦樋との適合性を考慮の上、設置するタンクの容量のみを地元の方に事前に決めて頂き、9 月 11 日に雨水建築普及小委員会及び雨水タンクメーカーの総勢 8 名に加え、ボランティアや地元の方も多数参加して、和気あいあいの中、設置や維持管理に関する指導を兼ねながら 12 基を取りつけました。取り付けできなかったタンクは、その後、地元住民、東北文化学園大学の岡田先生やその学生らの手により、新築後に取り付ける 1 基を残して 10 月 2 日に設置を完了しています。貯留した雨水は、庭木への散水、畑への灌水、屋外での手洗いに使用されているようです。今後、使い勝手や水質などの雨水利用状況に関するアンケート・ヒアリング等の調査を実施したいと考えています。

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