ひと・市民

雨水活用生活レポート~雨水活用建築ガイドラインを具現化した”雨の家” Part1

あまみず編集部 高橋朝子

商店街の一角にある早坂邸

商店街の一角にある早坂邸

2011年7月に日本建築学会から建築での雨水活用の指針となる「雨水活用建築ガイドライン」が刊行された。その執筆を担当した雨水建築規格化小委員会メンバーの早坂悦子さん(雨水市民の会会員)は、自宅新築にあたり、そのガイドラインにそって、雨水を活用する「雨の家」を計画。その「雨の家」の完成見学会が2012年11月30日に行われ、参加してきた。

下北沢駅の商店街近くの「雨の家」は、敷地約80㎡、RC造の3階建(1階が店舗、2、3階が自宅であり、2012年7月に竣工した。雨水活用のキーワードである「集雨」「保雨」「整雨」「配雨」に、建築士、工務店をはじめ、たくさんの人たちが様々な知恵を出し合った。当初、埋設型の雨水タンクを設置する予定だったが、地下水の水位が高く、雨水浸透には不向きなうえ、コスト面を考えて、隣地境界と建物の間(地上)と屋上に分け、屋根面積1㎡当り100ℓ、約4000ℓ(4トン)を貯留することにした。

雨水活用システムは1階と2、3階の2系統に分かれている。1階は30㎡の屋根からの雨水を初期雨水除去装置、取水フィルター、沈殿用タンクを経て、340ℓのタンク6台を連結した貯留槽(合計約2トン)(写真1)に溜める。電動ポンプで送水し、1階のトイレ洗浄水に利用する他、手押しポンプで庭の散水や清掃、非常用水として利用する。断水時、災害時には近所の方も雨水を利用できるように手押しポンプは道路に面して設置されており、雨水活用での地域貢献も考えられている(写真2)。2、3階のシステムは、15㎡の屋根からの雨水を、初期雨水除去装置、取水フィルターを経て、屋上にある2トンの木製貯留槽に溜める。トイレ洗浄水の他、洗濯にも使うため、ポンプでの送水時に再度フィルターを通してから給水している(写真3)。トイレは雨水が使えない場合に備え、ホースがワンタッチで外れ、簡単に水道へつなぎ換えられるようになっていた(写真4)。貯留槽や初期雨水除去装置、取水フィルターは、簡単にメンテナンスができる工夫もされていた。

早坂さんは、雨水とはいえ、利用して“汚水”として排水するので、その浄化処理費用としての下水道料金は支払うことにした。下水道局に相談したところ、排水量を直接計るのではなく、屋根面積や家庭での用途別水使用量調査結果などを用いて雨水活用分の排水量を推定し、水道使用量から算出した下水道量に加算する方法を提案された。この雨の家のシステムでは、1か月に1㎥の雨水を利用し汚水として排水すると推定され、その分の下水道料金を支払うことを承諾した。利用開始後に届いた「水道・下水道使用量等のお知らせ(検針票)」をみると、通常のものとは別に、雨水利用分の下水道使用量のみの伝票であった。早坂邸洗濯トイレ手押しポンプ2

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