ひと・市民

使い続けて雨の大切さを子どもたちに体感してほしい!「天水尊」復活プロジェクト・伊藤林さんに聞く

柴 早苗(雨水市民の会副会長、市民活動・環境ふれあい館担当委員会委員長)

 

墨田区立小中学校の雨水タンクの補修をした伊藤林さん。

墨田区立小中学校の雨水タンクの補修をした伊藤林さん。

天水尊は、市民の会の前理事長である徳永暢男さんが、1994年に開催された雨水利用東京国際会議を契機に、個人宅への雨水利用普及のために開発した雨水タンクです。雨水市民の会で地元の墨田区の全部の小中学校に設置しました。当会事務局長の伊藤林(いとうしげる)さんは、墨田区で地域のさまざまな分野で活躍されている方ですが、学校にあるその天水尊の維持管理について、「天水尊」復活プロジェクトを立ち上げ実施されています。今回、その経緯と実施状況について伺いました。

「天水尊」の復活を考えられたきっかけはどんなものでしたか?

 

伊藤:1995年に墨田区の雨水タンクへの助成金制度が発足してから、早や18年目です。10年以上経ったタンクは健全に使われているのか、気になっていました。特に徳永前理事長が中心になって全小・中学校に導入した「天水尊」は、現況がどうなっているか、管理体制を調べる必要があると思っていたのです。すみだ環境ふれあい館の管理運営を受託している墨田区環境保全課から、学校へのアンケートを取るので協力してほしい旨の依頼があり、設問内容などを協議して、教育委員会から各学校にアンケートを取ってもらいました。

アンケートの内容は、雨水タンクの有無から、外観的水質、環境学習への活用の有無、溜めた雨水の用途やメンテナンス状況などと多岐にわたるものでしたが、全38校が回答してくれました。

アンケートの結果、それを受けてどう取り組んだのでしょうか?

学校雨水タンク活用状況伊藤:全38校のうち雨水タンクがあり活用している学校は23校で約6割でしたが、学校によって雨水活用への取組みに結構温度差があることがわかりました。「天水尊」が設置された経緯を知らないといった声もあり、ちょっと寂しく思いました。

アンケート結果で、大丈夫と回答した学校以外は、個別に学校と日程調整をして実際に出向き、状況を把握しました。壊れて修理不能になったり統廃合でなくなった4校には新設し、その他修理で復活しそうな8校(6小学校と2中学校)も含め対応しました。

残念ながら現在製造されていない「天水尊」に代わって、葛飾区のサンエービルドシステム製「ミニダム」を安く仕入れて補修実費を捻出しました。区からの予算は少額で連絡調整費や工賃は出せず、親戚の水道屋さんの助力でなんとか3月末までに問題のあるところは解消できたんです。

実際の学校現場の状況はどうでしたか?

伊藤:学校で雨水設備の活用状況がまちまちでした。土の上に置いただけで土台が傾き、雨水タンクに導く縦樋のずれや外れが見られたり、ストレーナーにゴミが詰まって蓋のようになりタンクに雨水が入らないケースなどが見受けられました。縦樋のずれなど些末なところは、学校の主事さんに時々の目配りをお願いしました。

左)架台が錆びて危険 中左)水位計が破損 中右)修繕後清掃 右)施工完了

左)架台が錆びて危険 中左)水位計が破損 中右)修繕後清掃 右)施工完了

雨水は使って始めて子供たちの目や心に残るものです。あまり雨水活用がなされていない学校も散見された現状に、もっとPR活動が必要と思いました。当時は、福島第一原発事故の放射能の影響もあり、雨水は使わないという方針を打ち出した東京都の教育界だったこともあるかもしれません。しかし、雨水自体は測るとほとんど問題にならない状況です。使いながら考えることが重要です。校長さんや副校長さんの意識や姿勢が鍵を握るとも思われ、雨水先進都市墨田として、教育の中での雨水活用に対する意識啓発を行っていく必要があると感じました。

学校以外のところについてはメンテナンス状況はどうですか?

伊藤:雨水活用をやっている近所の人から、ちょっと見てほしいという声があり、出向いたりしています。土砂の排出や樋の外れかけなど、問題が見つかりました。自分でも出来ますよと言っても、「ちょっとやってくれねえか」と依頼されることもあります。やはり、やりつけないことは面倒なんでしょう。

今後の課題についてお聞かせください。

伊藤:橋やトンネルなど数十年前に整備した社会基盤の維持管理が日本中で課題となっていますが、雨水活用も、これからは維持管理が大切になっているという実感を持っています。会として、メーカーの対応が困難な小規模の雨水タンクについては、出張費プラス材料費実費程度の負担をお願いし、修理等の要望に応えていきたいと考えています。その他の維持管理に関する質問や疑問等もお受けしますので、気軽に事務局宛てにご一報をお寄せいただきたいと思っています。

:天水尊復活プロジェクトの端緒となるお話が聞けて勉強になりました。どうもありがとうございました。

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