ネットワーク

(9) すみだ雨水宣言 2024

雨水ネットワーク全国大会 in すみだ実行委員会

”第14回雨水ネットワーク全国大会2024 in すみだ”報告  (その9)

ちょうど30年前の1994年「雨水利用東京国際会議」では、世界に向けて「雨水利用東京宣言*」が出されました。この宣言から全国に雨水利用の普及を目指す市民団体が生まれ、各地の市民、学識者、自治体、企業などがつながり、2008年に同じくここすみだで雨水ネットワークが発足しました。

30年前の宣言が一つの道筋を示した結果だと言えるでしょう。今回の大会での議論を踏まえ、未来につなぐ指針として「すみだ雨水宣言2024」がまとめられました。20代の若い世代が読み上げ、賛同の拍手を持って閉会となりました。

第14回雨水ネットワーク全国大会2024 in すみだの締めくくりは、大会のテーマ「雨を活かして、未来へつなごう。」に相応しく、「すみだ雨水宣言2024」を20代の若者たちが読み上げた。

すみだ雨水宣言2024

地球に何十億年と降り注ぐ雨は全ての命の源です。日本に暮らすわたしたちも、古来より雨の豊かな恵みを受けて、土地を耕し、まちを潤し、文化を育んできました。

しかし、その雨に脅かされてきたこともまた事実です。過去数十年で水災害の頻度と規模は増大し、資源の不足、人の移動、経済的損失といった影響が世界の平和にも危機をもたらしています。この先、さらに切迫する「地球の沸騰化」によって、人類は経験したことのない高温、豪雨、干ばつに直面すると言われています。

変化したのは、わたしたちの生活も同様です。現在日本では人口のおよそ9割がインフラの整った都市部に住み、世界でも2050年には都市人口がおよそ7割に達すると言われてい ます。都市化はわたしたちを自然の脅威から守り、くらしを便利で豊かにした一方、かつて は身近にあった自然とつき合う知恵や技術も遠いものになってしまいました。水も例外ではなく、わたしたちはいつしか、雨を源とする水のめぐりがあってこそ社会が成り立っていることを忘れています。

1994年、ここすみだで開催された国際会議は、日本で初めて雨水をテーマとし、世界で初 めて「都市と雨水」を考えました。30年を経た今日、わたしたち一人ひとりが、雨に親しみ、雨を活かし、謙虚に畏れ、その恵みのバトンを、未来を生きる人たちへと渡すために、雨水先進都市すみだに集うわたしたちは宣言します。

1. 雨をまちにとどめよう

雨を排除すると、まちは熱く乾き、人も 生きものもやがてはくらせなくなります。 降ってくる雨を、家や庭で、建物や敷地で、 道路や公園で、できるだけとどめてゆっくり流します。土や植物、地形といった水を とどめる自然の力に学び、取り入れます。そしてその効果を測り、科学的根拠を元に未来のまちづくりのルールを作ります。雨をとどめる力は、まちにうるおいと洪水に耐える強さをもたらします。

2.「水道」を補う「天水源」を増やそう

日本中に張り巡らされた上下水道は、わたしたちのくらしを便利で豊かにしました。 一方、降った雨をその場で処理し、活用する技術も大きく進展しました。上下水道の老朽化や災害による断水が現実となり、2024年初に発災した能登半島地震では、断水が最大11万戸に達し、7か月後の今も日常の生活用水に不自由する地域が残っています。そんな中、身近に雨を集める「天水源」を増やすことで、地域に応じた水源の選択肢を増やし、水源の自立をめざします。

3. 雨を活かし、還そう

地球の空はつながっています。きれいな広い空、豊かでやわらかな大地が、きれいな雨をもたらします。雨は、「天然の蒸留水」とも言われ、本来その水質は飲用を含めて幅広い用途に適しています。わたしたちは雨と水循環を考える国内外の人々と広くつながり、すべての生きもの、そして地球の健康を守るために、大気と土壌の汚染を防止し、きれいな雨を水循環の輪に返していきます。

4. 雨のあるくらしを楽しもう

雨は単なる気象現象を超え、くらしを彩ります。わたしたちは、雨だれの音、雨に洗われた緑、夕立のあとの清々しい空気といった雨の情景を五感で受け止め、雨と共にある生活を実践し、その楽しさを分かち合います。また、くらしの中の雨の流れや蓄えた雨の量と質を見える化し、雨水活用があたり前になる社会をめざし、雨に親しむくらしを楽しみます。

5. みんなで未来へつなごう

生命を育み、つなぐ源は「雨」です。わ たしたちは、くらしの中で雨をめぐらせ、そのゆくえを見直すことで、雨を大切な資源として活かし、雨と共に生きるくらしを次世代につなぎます。未来を生きる人に豊かで健やかな水循環を引き継ぐために、今日ここに集う全ての参加者は、知恵を集め、行動し続けます。

2024 年8 月4 日 「第14 回 雨水ネットワーク全国大会2024in すみだ」参加者一同

大会参加者と雨水ネットワーク全国大会 in すみだ実行委員たちの記念撮影


*参考:雨水利用東京宣言(1994年8月6日)
雨水は気候や風土、地域の特性はあるものの、だれもが平等に手に入れることができる資源です。そして雨は地球の中を循環しながらすべての生命を支えています。私たちは世界各地の様々な雨水利用の叡智を学びながら、都市の水源の自立をはかり、都市の水循環をよみがえらせ、都市の再生をはかりたいと思います。
日本には世界の年間平均降水量の二倍近い雨が降ります。しかもおよそ四日に一度は雨が降ります。世界の中でこんなに雨に恵まれた国はありません。このことは日本の独特の雨の文化を育むことを可能にしました。夏の夕だちの清々しさ。雨乞いとてるてるぼうず。雨に親しみ、雨と遊び、雨に恐れ、雨を敬う。雨こそが人間の豊かな感性を育んできたといっても過言ではありません。私たちは、1994年の雨水利用東京国際会議をきっかけに、世界の雨の文化を学びながら、もう一度このすばらしい日本の雨の文化を暮らしの原点から見直し、都市と雨の共生を目指します。
私たちは、雨水をもっと大切にしたい、もっと有効に利用したいという思いを込めてここに高らかに宣言します。
1. 世界の年間平均降水量の二倍近い雨が日本に降ります。私たちは、この雨を利用し、水源の自立を目指します。
2. きれいな空にきれいな雨が降ります。私たちは生命や文化を育む雨を汚さないようにするために、きれいな空を取り戻します。
3. 都市は雨を排除してきたため、熱い、乾いたまちになってしまいました。私たちは雨を地下に浸透して都市の水循環をよみがえらせ、まちにうるおいを取り戻します。
4. 私たちは墨田区で開かれたこの会議をきっかけに、長い年月をかけて培われてきたすばらしい日本の雨の文化を見直し、雨と共に生きるまちをつくります。
5. 私たちは雨水利用を行う世界中の人たちと手を組み、雨水利用で地球を救う輪を広げます。

” 第14回雨水ネットワーク全国大会2024 in すみだ”報告 リンク
(1)雨を活かして、未来へつなごう。〜”第14回雨水ネットワーク全国大会2024 in すみだ”に2200人が集まった
(2)すみだの雨水〜過去から学び、Next Stageへ〜(セッションⅠ)
(3)雨とネイチャーポジティブ〜雨水を活用した都市緑化の可能性ー立体的緑地と平面的緑地による生物多様性の回復(セッションⅡ-1)
(4) ゼロメートル地帯から考える雨と防災(セッションⅡ-2)
(5) くらしの中の雨水〜見える、楽しむ、活かす(セッションⅡ-3)
(6)飲む雨水〜インフラとヒトの変化から考える飲むあまみずの近未来(セッションⅡ-4)
(7) セッションⅡ-分科会「雨水と私たちの未来」まとめ
(8)  雨水は世界を救うか?(セッションⅢ)
本ページ  (9) すみだ雨水宣言2024
(10) すみだの雨水活用をみてみよう〜エクスカーション
(11) 楽しく雨を体験 〜あまみずフェスティバル

2024年8月3〜4日に開催された第14回雨水ネットワーク全国大会2024 in すみだは「雨水ネットワーク全国大会 in すみだ実行委員会」および墨田区が主催して行いました。実行委員は、地元団体のNPO法人雨水市民の会、NPO法人寺島・玉ノ井まちづくり協議会、中央大学、千葉大学、合同会社アールアンドユー・レゾリューションズ、雨水ネットワーク事務局の公益社団法人雨水貯留浸透技術協会など、18名のメンバーで構成。墨田区は大会会長として山本亨墨田区長、区役所事務局として環境政策課が参加しました。

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