ひと・市民

雨水銭湯、御谷湯オープン

高橋 朝子(Webあまみず編集部)

(左)鉄筋コンクリート5階建ての新御谷湯 (中)雨水庭園に雨水散水する伊藤林さん。水を汲むと補給の雨水が噴水のように吹き出す (右)1階休憩室の床下にある雨水タンク

(左)鉄筋コンクリート5階建ての新御谷湯 (中)「雨水庭園」に雨水散水する伊藤林さん。水を汲むと補給の雨水が噴水のように吹き出す (右)1階休憩室の床下にある雨水タンク

伊藤林(しげる)さんは、東京都墨田区で「御谷湯(みこくゆ)」という銭湯を経営されています。この御谷湯は新しく建て替えられ、雨水を活用する銭湯でもあります。オープンに先立つ5月17日に御谷湯内覧会が開かれ、Webあまみず編集部は取材に行ってきました。

俺は地域と福祉と雨水

(上左)銭湯の浴室。黒湯の湯当たりが柔らかい (中左)1階にある福祉風呂。総ヒノキの風呂は障がい者と家族専用 (上右)浴槽につかりながらとうきょうスカイツリーの一部が見える (下)新御谷湯内覧会は福祉関係、町内会、雨水関係の人たちでにぎわっていた

(上左)銭湯の浴室。黒湯の湯当たりが柔らかい (中左)1階にある福祉風呂。総ヒノキの風呂は障がい者と家族専用 (上右)浴槽につかりながら東京スカイツリーの一部が見える (下)新御谷湯内覧会は福祉関係、町内会、雨水関係の人たちでにぎわっていた

御谷湯は1947年に伊藤さんのお父さんが、空襲で焼けてまちづくりが始まった本所地域で銭湯を創業されました。建て替える前の御谷湯も大きな屋根からの雨を溜め、トイレの洗浄水などに利用していました。新御谷湯は、鉄筋コンクリート造り5階建て、1階は車いす利用の人が家族と入浴できる「福祉型家族風呂」と休憩スペース、2階は精神障がい者のための就労支援施設(*1)、3階はボイラーやろ過機がある機械室、4階、5階は浴室です。

屋上に降った雨を1階休憩スペースの床下にある5㎥の雨水タンクに導き、ポンプで各階のトイレの洗浄に主に利用し、また入口の脇にある小さな「雨水庭園」(*2)(レポーターの高橋が勝手につけた名前です。)の「水琴窟」の方の水鉢にも補給しています。もう一系統あり、屋上の雨を4階のベランダにある200ℓの雨水タンクに入れ、重力差を利用して「雨水庭園」の山形オブジェからの噴水として楽しませてくれます。

銭湯は斜陽産業というイメージを抱きがちですが、伊藤さんは「最近は銭湯の清潔感や浴槽の広さに惹かれてくるお客さんも多いんです。しかし御谷湯は地域への貢献として障がい者や高齢者にも利用していただきたい」と、その思いを語られます。

また、伊藤さんは「俺は地域と福祉と雨水なんだ」とよく言われます。若い時から銭湯業の合間に、病院に通う地域の人たちを車で送るボランティアをされ、また雨水市民の会にも積極的に関わって、現在は事務局長をされています。まさに新御谷湯は、その具現化した建物になりました。

内覧会は、地域の方、福祉関係、当会からも会員が数名出席し、大盛況でした。5月19日からオープンしています。一度入りに行きませんか。天井が高く、入っていてとても気持ちよさそうです。おまけに露天風呂からは東京スカイツリーが見えますよ。

 

*1 就労支援施設:障害者総合支援法に基づき、一般企業等での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う施設。御谷湯ビルにある施設は、NPO法人カラフル・コネクターズが運営する就労継続支援B型施設で、御谷湯の清掃をしたり、簡単な作業をする場所もある。

*2 「雨水庭園」:御谷湯ビル入口の両サイドにある。「流れ」は水鉢の雨水を柄杓で汲んで植物に水やりすると、山型オブジェから水が湧きだし水路を伝って、水鉢に補給される仕組み。雨水市民の会会員の麓雄二さんの作品。「水琴窟」は水鉢の雨水を柄杓で汲んで受け皿に水をかけて、パイプに耳をあてると心地よい音色が聞こえてくる。こちらは地元の住中浩さんの作品。

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